夜空を見上げる鮫と月 part８ (ページ23)

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所有物ページ23

マ「・・・・・。」

僕は幻覚を解く。

暗い空間が溶けて無くなり、元のボスの部屋に戻る。

　「・・・。」

　マ「・・・・。」

床に寝ているAは、体を丸めて耳を塞ぎ眠っている。

Aがボスから離れないで床で寝るのは・・・

ボスの所有物である事の現れなのだろう。

Aの人生の中で、床で寝る事は当たり前で
ヴァリアーに来てからやっとベットで寝るように
なったようだ。

そして・・・

Aの心は、ヴァリアーに来てから変わっていった。

僕達と過ごして、このヴァリアーでの生活によって
Aの心は今までで一番安定していた。

母親のせいで、今まで失っていた人間としての感情が、
少しづつではあるが元に戻りつつあったようだ。

しかし・・・

「愛してる」と言われたAは母親に捨てられた
時の事を思い出してしまった。

母に捨てられてしまった時と同じように。

ボスに捨てられてしまうと思い込んでいる。

Aの元に戻りつつあった感情に、
再びヒビが入ってしまった。

道具として生きて来たAにとって、
捨てられる事は死を意味している。

いつか。

ボスに捨てられてしまう日が来る。

このヴァリアーに居られなくなる時が来る。

そんな考えがAの心を・・・

感情を・・・

壊してしまった原因だ。

　マ「・・・・。」

この状態を改善して行くには・・・

かなり時間が掛かるだろう。

　ス「・・・。」

　ザ「・・・・。」

　マ「・・・・。」

部屋には重い空気が漂っている。

そんな中で、

Aの小さな寝息だけがずっと続いていた。