獄寺 ページ29
Aside
私は１人、強い日差しに照らされながら
住宅街をホテルへ向かって歩く。
「・・・・。」
久しぶりに沢田達と再会してから数時間。
私とディーノで沢田家に行くと、なんとそこには
獄寺と山本も揃っていた。
彼らは私が訪ねて来た事にかなり驚いていたが・・・
彼らは変わらず、元気そうにしていた。
ディーノと私は少しの間、沢田家で過ごしていたが。
ディーノはもう一人、会いたい人物がいるらしく
私達はその場で解散した。
「・・・・。」
せっかくの日本と言っても・・・
私は特に他に用事なんて無い。
会いたいと思う人もいないし。
私に会いたいと思う人もいないだろう。
そんな事を考えながら私はホテルへと向かい
足を進める。
その時だった。
獄「・・・おい。」
「！」
ホテルに向かうその途中、１人で通りを歩いていると
突然に私の前に立ち塞がった人影。
私に向かってかけられた声に視線を上げれば、
そこに居たのは獄寺だった。
私は少し驚きながらも彼を見つめる。
「・・・・・。」
私は・・・彼との関わりがあまりない。
私が学校に通っていた間、沢田と山本は私に
よく話しかけて来たが、彼が私に話しかけて
来る事はあまりなかった。
そんな彼が・・・・
一体どうしたのだろうか・・・。
獄「・・・ちょっと・・・付き合えよ。」
「・・・。」
彼は私の事を見つめていたが、そう言うと１人歩いて
行ってしまう。
「・・・・。」
彼に付いて行けばいいのだろうか・・・。
私は黙って彼の後を追う。
「・・・。」
私の少し前を歩く彼は何も言わない。
もちろん、私が話しかける事も無い。
歩き続ける道の先にはゆらゆらと陽炎が揺れる。
そんな陽炎を追いかけるように歩き続ければ
彼は静かに足を止めた。
「・・・・？」
彼が足を止めた先にあったのは公園だった。
暑い日差しが差し込む公園には誰も居ない。
子供達も暑すぎて公園では遊ばないのかもしれない。
私は風で揺れるブランコを見てそんな事を考えた。
獄「・・・。」
「・・・。」
夏の日差しが差し込む公園で。
私の方へと振り返った彼は何も喋らない。
静かな風が公園を通り抜ける。
私の長い髪とブランコが揺れる。
獄「・・・・。」
「・・・・。」
私を見つめる彼の瞳に
私の姿が綺麗に映っていた。
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作者名：猫のこたつ | 作成日時：2019年7月29日 4時
