雲が聴くのは月の歌 part３ (ページ3)

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助けたいページ3

獄「・・・・。」

　「・・・。」

久しぶりに会ったのに、Aは俺の方を見ない。

　獄「A？・・・・！」

俺は手を伸ばし、頬に手を添えるとAの
俯く顔を上げた。

　獄「！」

　
　「・・・。」

Aの目元は涙で潤み、頬は赤くなっていた。

俺はその顔を見て驚く。

まるで泣いた後のようだったからだ。

　獄「A、どうしたんだよ・・・。」

　「・・・・。」

Aに話しかけても、Aは返事をしない。

ぼーっとした目でこちらを見上げている。

その姿はまるで、泣き疲れて何も考えられない。

そんな感じだった。

　獄「・・・。」

もしかして・・・・。

　獄「雲雀に何かされたか・・・・・。」

眉間にシワが寄るのが自分でもわかった。

Aは階段を降りて来ていた。

俺が今いる階の丁度上の階は雲雀がいる
応接室のある階だ。

Aがこんな顔をして応接室から出て来たとなれば、
考えられるのは雲雀に何かされたという事・・・。

　獄「っ！！」

俺はAを残して、階段を駆け上がる。

目指すのは雲雀がいる応接室だ。

　アイツ・・・許さねぇ！

俺は先程のAの顔を思い出し、歯を食いしばる。

Aにあんな顔をさせた雲雀が許せなかった。

心の奥から怒りが沸き出る。

しかし、

その怒りは自分にも向けられていた。

俺じゃあAを助けてやれない。

そんな自分の無力さに苛立っていた。

あの時、Aは俺を助けてくれた。

それなのに・・・

俺はAを助けられない。

近くに居てやる事も出来ない。

俺はAと出会った時の事を思い出す。

Aは俺を救ってくれた。

だから・・・

今度は俺が・・・

　獄「っ・・・・。」

Aを助けたいんだ。