雲が聴くのは月の歌 (ページ37)

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慰めページ37

獄「・・・A、授業にでねぇか・・・。」

　「・・・。」

俺がそう聞くが、Aは首を横に振った。

傘に当たる雨音が強くなる。

雨が激しくなったようだ。

　獄「A・・お前・・居なくなったりしないよな・・・。」

俺は立ち止まり呟く。

Aはいつも１人で居ようとして、どこか
苦しそうな表情や悲しそうな表情を浮かべて
居る事が多い。

そんなAを見ていると、俺はいつか
Aがどこか遠くへ行ってしまうような
そんな気がしていた。

イタリアから日本に呼んだのはそんな不安も
あったからだ。

もっとそばでAの事を見て居てやりたくて
呼んだのだが、それでもAは１人で居ようとした。

俺には何もAにしてやれる事が無い・・・

そんな現実を見せられて俺は苦しかったが、
一番苦しんでるのはAなのだ・・・。

俺はAを助けたい。

そんな気持ちでいっぱいだった。

　「・・・。」

立ち止まる俺の前を数歩進んだ所でAは
こちらに振り向いた。

　獄「っ・・・・。」

振り向いたAの表情は・・・

無理やり笑う。

そんな表情だった。

空から降る雨がAの代わりに泣いているように見え
俺は思わずAを抱きしめる。

俺とAの差していた傘が落ちる。

Aは黙ったままで俺の背中を
子供をあやすように軽く叩いた。

なんだよ・・・Aだけそんな事して・・・。

本来であれば逆の立場のハズなのに、
なぜか俺が慰められているような格好になる。

Aを抱きしめ、俺の位置から見えなくなった
Aの顔。

俺はそのAの本当の顔を知らないままだ・・・

響き渡る雨の音。

腕の中のAは温かかった。

道の真ん中で抱きしめ合う俺達２人を
雨が静かに濡らしていった。