雲が聴くのは月の歌 (ページ17)

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喋らないページ17

その女子生徒は喋らなかった。
黙ったまま僕を見上げている。

驚きすぎて声も出ないのだろうか。

この僕にこんな事させて、お礼の言葉も無ければ
怯える事も無い。

僕は予想していた反応が無い事を疑問に思いながらも、
その生徒からゆっくり離れる。

しばらくしてその生徒は我に返ったのか、
小さく頭を下げた。

　雲「・・・気を付けなよ。」

　「・・・。」

僕を目の前にしても怯える事が無い
そんな今までになかった反応に僕は少し
疑問に思いながら階段を登ろうと前を向く。

すると・・・

　雲「！・・・・？」

その生徒は僕の肩に掛けた学ランを引っ張った。

そんな事されるとは思わず、少し驚きながらも
僕は再びその生徒に向き直った。

　雲「・・・・なに・・・。」

　「・・・。」

僕がその生徒に向き直るとその生徒は
戸惑いの表情を浮かべながら
小さく口を閉じたり開いたりしている・・・。

　雲「・・・？・・・なに・・・。」

　「・・・・・。」

僕は引き留めて置いて喋らないその生徒に
少し苛立ちながら、聞き返す。

するとその生徒は少し寂しそうな表情を浮かべると
僕に向かって深くお辞儀をした。

僕は何が何だか分からず、その生徒を見つめる。

そしてその生徒は踵を返すと逃げるように
走って階段を下りて行った。

　雲「・・・・・・・・。」

僕は何だったのかよく分からず、その場に立ち尽くす。

階段にはその生徒の走り去る足音が
一定のリズムで響いていた。