雲が聴くのは月の歌 (ページ25)

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６文字ページ25

私は山本君の方を向く。
彼は私を黙って見つめる。

言わなくちゃ・・・。

山本君は私が目覚めるのをずっと
待ってくれていたのだ。

私は・・・迷惑をかけてしまった・・・。

　「・・・・・・。」

私は山本君に話す。

　山「・・・？」

しかし、山本君は首を傾げてしまう。

それを見て思い出すのは昼休みの事。

階段で私を助けてくれた学ランの人。
あの人にも伝わらなかった。

伝えたい事が伝わらない。

たった６文字の言葉すら

私には伝える事ができない・・・。
　

　「・・・。」

　山「・・・A？」

俯く私に山本君が話しかける。

私はこれ以上心配させまいと山本君を見て
微笑みかける。

しかし、私の頭の中に思い浮かぶのはあの日の事。

心が締め付けられて苦しくなって、
息が出来なくなる所をなんとか堪えると
私は立ち上がる。

今ここで倒れる訳にはいかない。
彼がさらに心配してしまう・・・。

　山「・・・大丈夫か？」

　「・・・・。」

ふらふらと立ち上がる私を見てやはり山本君は
私を心配してくれた。

彼は優しい。

隼人も優しいし沢田君も京子ちゃんも花ちゃんも・・・

今日、私が知り合った人達はみんな私に優しかった。

でも・・・だからこそ・・・私は・・・・。

２人で立ち尽くす体育館にチャイムの音が鳴り響く。

　山「ほら、教室帰ろうぜ？皆心配してるのな。」

　「・・・。」

皆が私を心配している・・・。

普通の人ならばそんな事無いのだろうけど、
今の私にとってその言葉は私の心に深く突き刺さる。

痛みを持って、熱を持ってじわりと感情が滲み出る。

心の奥が締め付けられる。

　「・・・。」

だけど、それを知る人は誰も居ない。

私は山本君に静かに頷いて返事を返すと、
痛む心を引きずって体育館を後にした。