心の傷 ページ12
私はその質問に動きを止めた。
山本君に悪気が無いのは分かっている。
それでも、彼の言葉で思い出されるのは
イタリアでの出来事。
それは私の中の記憶を呼び起こし、
私の心は締め付けられる。
俯く私を2人は不思議そうな表情で見つめていた。
獄「A、大丈夫か・・・？」
「・・・。」
隼人はそう言って私の隣に座り込み、
俯く私の顔を覗き込む。
隼人は優しい。
イタリアに居る間も私が寂しくないようにと
よく連絡をくれた。
そして一人で居る私を日本に呼んでくれたのだ。
だけど・・・。
私の心の傷が治る事は無い・・・。
思い出された記憶は何度も何度も自分を傷つける。
私はゆっくり立ち上がると屋上のドアへ歩く。
そんな私を隼人は呼び止めたけど、
追いかけて来なかった。
私は皆に少しでも心配されないように
笑ったけれど、うまく笑えたか分からない。
「・・・。」
私はドアから背を離し、階段をゆっくりと下る。
私の足音が階段に響く。
少し離れた教室から生徒達の楽しそうな
笑い声が聞こえる。
私は1人。
自分で1人になりたかったハズなのに、
隣に誰も居ない事がなんだか寂しくて悲しくて。
思い出された記憶が私の心を締め付ける。
視界が目に溜まる雫のせいでだんだんぼやけていく。
「・・・・。」
私はそれでも歩くのを止めない。
目的も無く動く足は私の意志とは関係なく
階段を下りて行く。
ズルッッ！！
「！！！」
その時、私の足は勝手に階段を踏み外した。
私はぼやけた視界のせいで何が起こったのか
分からなかった。
いきなりの浮遊感に踏み外したと理解した時には
既に遅く・・・。
私は強く目をつぶる事しかできなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 198人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：猫のこたつ | 作成日時：2019年10月29日 16時
