最後の夜 ページ5
Aside
海は広い。
大きくて青くて綺麗だ。
高く登った日の光をキラキラと反射させながら
白い波を立てる海を私は眺めている。
「・・・。」
この豪華客船に乗り込んでから今日で８日。
あと２日でこの船は出航した港に戻って来る。
今日までに捕獲したブローカーは１８人。
この大きな客船に一体どれだけのブローカー
が潜んでいるのかは解らない。
しかし
これだけの人数を捕獲できたのだ。
後は彼らを拷問・尋問して芋づる式に大元を
探し出す事ができれば完璧だ。
取り残しのブローカーも、大元が判明して
からで大丈夫。
それにそっちの方が捕まえやすい。
「・・・。」
私は終わりを告げようとしている船旅を少し
名残惜しく思いながらも、今後の事を考えていた。
母「A・・・ここにいたのね。」
「！」
私が船の廊下で海を眺めていると私に
話しかけて来たのは母だった。
この広い客船の中で母にはこれまでの滞在中も
何度か会った。
そんな時は少しだけ、
他愛も無い話をしたのだ。
母「綺麗ね・・・。」
「・・・。」
母は私の隣に立つと海を見つめて言った。
母「もう・・・この船も２日で港に戻るわ・・・。」
「・・・・。」
母「そしたら・・・もう会えないのね・・・・。」
私が母を見ると母は寂しそうな表情をして海を
見つめていた。
母「A・・・最後の夜に・・・話したい事があるの・・・。」
「・・・・。」
廊下の手すりを掴む私の手に母の手が重なる。
その手は温かかった。
母「この場所で・・・待ってるから。もし・・・少しでも・・・。私を・・・許してくれるなら・・・・。ここに来てくれるかしら・・・・。」
「・・・・・。」
母はそう言うと私を見つめる。
その瞳は何かに祈るような光を持っていた。
私は静かに頷く。
母「・・・ありがとう。A・・・愛してるわ・・・・。」
母は最後にそう言って、船内に戻って行った。
「・・・・・。」
私だけがその場に残される。
潮風が私の長い髪を撫でて通り過ぎる。
母が重ねた手を胸元で握りしめれば
潮風に混ざって
なんだか甘い香りがした気がした。
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猫のこたつ(プロフ) - コメントありがとうございます！まさかコメントいただけるとは思っていなかったのでとても嬉しいです！ありがとうございます！ (2019年10月27日 14時) (
レス) id: d3f62d5375 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - 気になる気になる (2019年10月27日 13時) (レス) id: d72df01982 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫のこたつ | 作成日時：2019年10月19日 10時
