２人の願い ページ28
Aside
そこはとても綺麗な場所だった。
聞こえるのは静かな波の音だけ。
海の上に浮かんだ満月が海面を照らし、
キラキラと輝いている。
「・・・。」
そんな場所には先客が1人。
静かに月を見上げていた。
月灯りに照らされて銀色の長い髪が綺麗に輝いていた。
私が彼に近づくと、彼はゆっくりと振り向いた。
ス「・・・・。」
「・・・・。」
彼は私と目が合うと、目を見開いて動きを止める。
2人の間を潮風が静かに通り抜けた。
私は彼の元まで近づくと彼の手を取る。
その手は長い間潮風に当たっていたからか
少し冷たかった。
「スクアーロ・・・。」
私は彼の手を自分の手で包むように握り、
彼を見上げて名前を呼んだ。
しかし、
彼は固まったまま動かない。
「・・・ただいま。」
私がそう言うと彼は瞬きを１つしてから
そっと
私の頬に手を添えた。
その手は微かに震えていた。
ス「俺は・・・Aが居なくなってからここでずっと・・・月に願ったんだぁ・・・。」
彼はぽつりぽつりと小さく話しながら
夜空を見上げて月を見る。
ス「だがなぁ・・・いくら願っても夜空の月は俺の願いなんか叶えちゃくれなかった・・・。」
月灯りに照らされた彼の顔は今にも
泣き出しそうな顔をしている。
ス「でも・・・今日・・・やっと叶いそうだぜぇ・・・・。」
そう言って視線を私に戻すと私の頬を
震えた手で優しく撫でる。
ス「俺の願いは・・・この先ずっと・・・俺の隣にAが居る事だぁ・・・。」
彼は私を見つめる。
彼の目には月明りに照らされた私が写っていた。
ス「う゛ぉぉぃ・・・・俺の願い・・・聞いてくれるかぁ？・・・お月さんよぉ・・・。」
そう言うと彼は私の事を抱きしめる。
私の存在を確かめるように強く強く抱きしめる・・・
「・・・。」
抱きしめられながら思い出すのは・・・
あの青く綺麗な海の世界。
私は彼の色に溺れながら月に願った。
「スクアーロが・・幸せに・・なりますように・・。」
それは私の最後の願いだった。
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猫のこたつ(プロフ) - コメントありがとうございます！まさかコメントいただけるとは思っていなかったのでとても嬉しいです！ありがとうございます！ (2019年10月27日 14時) (
レス) id: d3f62d5375 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - 気になる気になる (2019年10月27日 13時) (レス) id: d72df01982 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫のこたつ | 作成日時：2019年10月19日 10時
