夜空を見上げる鮫と月 (ページ9)

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頬に赤ページ9

Aside

　ス「う゛ぉぉおい・・・大丈夫か・・・。」

「・・・。」

ボスの部屋から二人して廊下に出ると、スクアーロは
疲れたように話しかけてきた。

明らかに声も少し小さくなっている。

私も緊張の糸が切れてなんだかぐったりとしていた。

まぁ、生きて帰れたので大丈夫だと頷いておく。

しかし。

スクアーロは私を見ると少し眉間にシワを寄せた。

　ス「・・・切れてるぞ。」

　「・・・？」

疑問に思いつつスクアーロを見上げると、スクアーロは
自分の右頬を指差している。

私も同じように自分の頬を触ってみると指に赤い血が
付いていた。

　ス「瓶の破片で切れたんだろ・・・あのクソボスは・・・。」

「・・・。」

スクアーロは私の右頬の傷を軽くなぞると、隣で大きく
ため息を付く。

　ス「念のために後で消毒くらいはしておけぇ。化膿すると面倒だぞ。」

　「・・・。」

ボスに挨拶する前と後では随分とスクアーロの態度が
変わっている。

「死ぬんじゃねぇーか」なんてからかっていたハズだが
なんだかんだと心配してくれているのだろうか。

　ス「今日はかなり機嫌が悪かったぜぇ。まぁ、部屋が消し炭にならなかっただけマシかぁ。」

　「・・・。」

そんな事を言いながらスクアーロは隊服を脱いでいる。

黒くて分かりづらいが、ジャケットはワインのせいで
赤黒くなってしまっていた。

私はポケットからハンカチを取り出し、スクアーロに
差し出す。

彼の長い髪からはまだワインが滴っていた。

　ス「あ゛ぁ？・・・あぁ。わりぃな。」

「・・・。」

差し出したそれが何だか分からなかったのか
スクアーロは一瞬だけ眉間にシワを寄せたが、
素直に受け取った。

　ス「今日はもう部屋に戻っていいぜぇ。メシの時間になったら呼びに行く。他の奴らの説明はその時でいいだろ。」

体を軽く拭きながらスクアーロが言う。

私も疲れたのでその方がいい。

黙って頷いておいた。

その後はスクアーロと廊下で別れ、私はあの豪華な
自分の部屋へと

生きたまま戻って来れたのだった。