ボスを見る瞳 ページ32
その声に隣を見上げると、
ボスが私を見下ろしていた。
酔っているのだろう、頬が少し赤くなっている。
「・・・。」
私はボスを見上げながらゆっくりと首を横に
振る。
まだ少し赤いが、痛みはだいぶ無くなった。
ザ「・・・そうか。」
ボスはそう言うとグラスを口へ運び、傾ける。
「・・・。」
私は黙ってボスを見上げている。
ボスは端麗で、取る行動一つ一つから気品の良さを
感じる。
そしてお酒を飲み続ける姿は、とても崇高で
見飽きる事は無い。
「・・・。」
そんなボスの姿を見て、最初に抱いていたボスへの
恐怖感や警戒心はすっかり無くなり、私はボスに目を
奪われていた。
ザ「・・・。」
「・・・。」
飲み終わり空になると、ボスは私に向けてグラスを
傾ける。
それに合わせて私もグラスにウイスキーを注ぐ。
この一連の動作に無駄は無く
そして会話も無い。
時々聞こえるのはカランコロンと氷の音色。
そんな静かな空間に居るのがとても心地よかった。
「・・・。」
どれくらい経ったのか。
私が持っているウイスキーの瓶も中身は残り一杯と
言った所だろうか。
このウイスキーの瓶は大きく、中身が満杯に
入っていた時は、かなりの重量で。
これを額にくらったと考えると、我ながらよく
気絶で済んだと感心してしまう程なのだが。
ボスの飲み続けるピッチは速いまま変わることなく。
ここまであっと言う間だった。
ザ「・・・。」
ボスが黙ってグラスを私に傾ける。
「・・・。」
私は最後の一杯を注ぐ。
するとボスは軽くグラスをクルクルと回してから
一気にそれを飲み干した。
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作者名：猫のこたつ | 作成日時：2019年7月20日 13時
