蝶 々 結 び【 ヒプノシスマイク 】

風 向 き 【 有栖川帝統 】 ページ9

風が頬を刺すように冷たい。
空を見上げると、青い空と舞う枯葉。



秋だなあと感じる。




そして、彼女の家に同居してからもう二ヶ月も経つ。
それに、彼女に一目惚れしてまだ二ヶ月しか経っていない。




「 あ、帝統さん 」




ドアを開けると笑顔で迎えてくれるA。
その笑顔も好きで好きで仕方がない。




「 今日の賭けはどうでしたか？ 」


「 勝った。でも幻太郎との小さな賭けだ 」


「 でもすごいじゃないですか！ 」


小さな賭け、とは乱数が事務所に戻ってきてプリンを食べるか食べないか。
そんな事でも素直に褒めてくれる彼女は、俺にとって大切な存在だ。




だからこそ、そろそろ伝えてもいいのではないかと思う。




窓の外で吹く風。
その風に乗せて、この気持ちが届けばいいのに。
そう思い、ふと窓の外を見ると、風向きが変わっていた。






＿＿＿＿俺の方から、君の方へ。







「 なぁ、A 」


「 なんですか？」と首を傾げる彼女の頭にポンと手を置く。


「 このままずっと、Aの傍にいさせてくれ 」




勇気を振り絞った。
……勇気は振り絞った。


「 もちろんです 」


だけど、俺の気持ちは届かないまま。




『 好き 』 とハッキリ言わなければ伝わらないのか。




もう一度窓の外に視線をやると、風向きは全く別の方向に変わっていた。






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