幻 に 溺 れ て 【 入間銃兎 】 ページ4
何事もない一日なんてヨコハマでは有り得ない。
今日も悪事を働いて、疲れ切った身体でヨコハマの街を歩く。
こんなに汚れた僕でも、ヨコハマの空は僕を受け入れてくれる。
ああ、夜のヨコハマは綺麗だ。
空から正面に視線を戻すと、僕の思考は止まった。
特に何もない平日の夜。
「 A… 」
何も約束をしていないのに、僕の目の前にはAが立っていた。
「 仕事でこの辺まできたから会いに来ちゃった 」と笑う君は、宝石なんかよりも綺麗で愛しい。
「 終電まで時間あるから…… 」と小さく言うAを、僕は自分の家へ連れて行った。
何か飲むかと聞くと、「 銃兎さんと同じもので 」と答えた。
僕は残っているブラックコーヒーを作る。
新しいものをそろそろ買わなくては。
彼女と僕のぶんのコーヒーをテーブルに置く。
僕は彼女の隣に座った。
そっと彼女を引き寄せ、抱き締める。
「 銃兎さん…… 」
「 黙っていて 」
この時間は、許してほしい。
この時間だけは。
「 あっ 」
彼女の携帯が鳴る。
携帯には、“ 左馬刻 ”の三文字が光っていた。
「 ごめん 」
僕から離れる彼女。
ああ、やっぱり駄目なのか。
彼女はあいつのものであって、僕のものなんかではない。
分かりきっていた事なのに。
電話によって遮られた時の続きを望むのは、反則だろうか。
「 銃兎さん、ごめんなさい、そろそろ終電…… 」
電話を終えた彼女が申し訳なさそうに言う。
「 泊まっていけばいいよ 」と言えない僕は、「 駅まで送っていく 」と視線を逸らした。
駅に到着してから電車が来るのはあっという間だった。
最終電車に乗り込む彼女の背中は、愛おしくて仕方がない。
「 また、いつか 」
それしか言えない僕に彼女は微笑み、手を振る。
過ぎて行く電車をずっと眺める。
僕には君しか見えない。
君の瞳に、溺れて堕ちていく。
あの笑顔も、表情も、僕以外の誰かには見せないで。
そしてまた、その笑顔で僕を魅了させて。
僕はまた、君に溺れていくから。
-
次回予告 『 ライラック 』 Main 観音坂独歩
2019年ヒット予想ランキング第5位にヒプノシスマイクが選ばれました!
おめでとうございます!
とても嬉しい事なのですが、グッズの入手が困難になりそうですね 汗
皆様、頑張りましょう!!!
ラ イ ラ ッ ク 【 観音坂独歩 】→←楽 園 【 夢野幻太郎 】
153人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆゆ - すごく丁寧な文章で読みやすかったです。これからも頑張ってくださいね! (2019年3月7日 22時) (レス) id: 9c563060f2 (このIDを非表示/違反報告)
虹 恋(プロフ) - のんたんさん» ご指摘ありがとうございます。個人的な意向で地の文の一人称は「僕」に統一しています。しかし、左馬刻や理鶯などはしっくりこなかったのでそのままになっております。 (2019年1月14日 17時) (レス) id: caee934ee2 (このIDを非表示/違反報告)
虹 恋(プロフ) - まぼさん» 了解致しました。体調が悪いのと色々とバタバタしていますので、遅れてしまいます。ごめんなさい。 (2019年1月14日 17時) (レス) id: caee934ee2 (このIDを非表示/違反報告)
まぼ - 付き合ってる設定で、風邪を引いた夢主を看病する左馬刻様が見たいです。リクエストです。お願いします。 (2019年1月7日 15時) (レス) id: 65a9d51e4d (このIDを非表示/違反報告)
のんたん - 銃兎さんと独歩の一人称、違いますよ?銃兎さんは、私or俺で、独歩は、俺です。 (2019年1月7日 15時) (レス) id: 65a9d51e4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:虹 恋 | 作成日時:2018年9月30日 13時