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嘘 隠 し 【 夢野幻太郎 】 ページ14

本を捲る微かな音でさえ、うるさく聞こえる。
深い溜息を吐くと、自分が寂しい男なのだと心底思う。



もう正午を過ぎているというのに、食事も喉を通らず、ただただ同じ本を永遠に読み続けるのみ。
そんな自分が情けなくて、今すぐにでも現実から目を背けて、深いところへと堕ちたい。




「 幻太郎さん 」と僕の肩を揺さぶる彼女に冷たい視線を送ると、彼女はしゅんと肩を縮めた。



「 怒ってるよね 」

その言葉に「 まさか 」と答える。
読んでいた本を閉じ、僕は口を開いた。



「 Aが麻天狼の連中と愉快そうに外出することは、
麻呂にとってはどうってことないですからっ 」

「 麻呂はぁ、乱数や帝統さえいれば、今は満足なんですよ? 」



特徴的な声で僕は喋り続けた。
ニコッと笑いかけると、彼女はキョトンとした表情で此方を見る。
そういえば、彼女の前で演じるのは初めてだったか。




「 幻太郎さん… 」



真っ直ぐな瞳で見つめられる。
一瞬怯みそうになったが、平然を装った。




「 まぁ、嘘なんだけどね 」



いつもの調子で言葉を加えると、彼女は驚きの表情を見せた。



「 本当は、貴方にはどこにも行ってほしくないですし、小生だけを見ていてほしい 」





それを言葉にすれば、自分の顔が熱くなったのがわかった。
慌てて顔を逸らし、「 もちろん嘘です 」と付け加える。



数秒の沈黙。
それに耐えきれず、赤いままの顔で彼女を見る。
パチッと視線が絡んだ。




「 もう……嫉妬させないでくださいね 」
そう言って彼女の頭を優しく、柔らかく撫でた。






-




次回予告 『 アドニス 』 Main 入間銃兎



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ゆゆ - すごく丁寧な文章で読みやすかったです。これからも頑張ってくださいね! (2019年3月7日 22時) (レス) id: 9c563060f2 (このIDを非表示/違反報告)
虹 恋(プロフ) - のんたんさん» ご指摘ありがとうございます。個人的な意向で地の文の一人称は「僕」に統一しています。しかし、左馬刻や理鶯などはしっくりこなかったのでそのままになっております。 (2019年1月14日 17時) (レス) id: caee934ee2 (このIDを非表示/違反報告)
虹 恋(プロフ) - まぼさん» 了解致しました。体調が悪いのと色々とバタバタしていますので、遅れてしまいます。ごめんなさい。 (2019年1月14日 17時) (レス) id: caee934ee2 (このIDを非表示/違反報告)
まぼ - 付き合ってる設定で、風邪を引いた夢主を看病する左馬刻様が見たいです。リクエストです。お願いします。 (2019年1月7日 15時) (レス) id: 65a9d51e4d (このIDを非表示/違反報告)
のんたん - 銃兎さんと独歩の一人称、違いますよ?銃兎さんは、私or俺で、独歩は、俺です。 (2019年1月7日 15時) (レス) id: 65a9d51e4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虹 恋 | 作成日時:2018年9月30日 13時

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