青い薔薇は避けられない ページ6
「ふんふふ〜ん♪」
機嫌が良くなってきた。その理由は明白なわけだけれども。
「今頃どんな顔してるかなぁ〜☆」
「飴村乱数がシンジュクにいる」という噂がたてられる前に、早く帰らないと。
寂雷の嫌そうな顔も見たかったけど、会いたくはなかったから。
「こんにちは、オニーサン?こんなところで会えるなんて、以外だなぁ〜」
僕の機嫌は、急降下した。腹の底が冷えていく。
顔を上げるのは怖かった。
同じ声。青いパーカーにたくさん突っ込んだ飴が見える。
「僕には君が理解できないな〜☆なんで君がここにいるのかも、わからないし、なんで君があのチームで戦いに行こうとするのかもわからないし、なんで君が生きようと必死なのかもわからない。謎だらけだね」
「ねっ☆」と、うつむいたままの僕の顔をのぞき込んできたので、ビクッとしてしまった。そんな怯えたような僕をあざ笑うかのようにニッコリと笑みを浮かべたままの『僕』は、ポケットから飴を取り出し、咥えた。
嫌味のように、僕の目の前で、舐めている。
「僕だってデザイナーだからね……。仕事にも息抜きが必要ってこと」
「でももうすぐ代替わりかな〜?君より僕のほうがいいもの作れると思うんだぁ〜」
ああ言えば、こう言う。感情を持たない彼らの、純粋な感想。なんの意思もない、口に出すことの惑いや不安のない、至って清い感想。それが、僕と彼の違いを見せつけた。
「……君には僕みたいな感性はないと思うよ。だって、感じる心がないからね」
「君みたいにならなきゃどうだっていいよ」
「操られてばかりの君よりかは、生きてる価値を感じるよ」
僕は昔だったら、こんなこと言わなかっただろう。
生きることに価値を感じない、ただの操り人形同然だったのだから。
でも、今は後悔していないように感じる。昔より、今を生きる方が辛いけど幸せだと思っている。
「……ま、僕にはそんなことどうでもいいけどね〜。今回のことは報告する気ないし、おとなしく死んでくれればそれでいいよ」
そう言って、『僕』は去っていった。
僕は呆然と立ち尽くした。手の震えが止まらなかった。
今までこんなことなかったのに。一言でも違えば、殺されていたかもしれない恐怖。
───あいつの手には、真正ヒプノシスマイクが握られていた。
ボーッと立っていたその時、後ろにぐっと腕を強く引かれた。
驚いてふり返り、腕を振り払う。
その人を見て、僕はさらに目を丸くした。
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作者名:ゆの | 作成日時:2021年4月19日 17時