終天に巡り逢うⅣ (ページ40)

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番外編６ページ40

一度足掻いて、そしてすぐに諦めたように脱力したA。

『負けたー』

「勝てると思っていたのか？」

『まさか。そこまで驕ってませんよ』

そう笑うAの瞳に漸く俺が映る。

『でも少しは、びっくりしました？』

「…さあな」

『えー』

「まぁまさか本気で心臓を狙ってくるとは思わなかったが？」

『あはー。つい癖で急所狙っちゃうんですよね』

「恐ろしい癖だな」

『ずっとそういう所に居ましたからね。そうしないと効率も悪いですし。馬鹿みたいに自分の実力を誇示する必要もないですし。もうサクッと終わらしちゃいましょっていうか』

「…」

『ウルド様ならきっと避けるだろうなということでガチめにいきましたハイ』

「仮にも伴侶の命を本気で狙うとは」

『え、あ、…えへへ』

誤魔化すように笑うAの頬に指を滑らせる。
ナニカを感じ取ったのか、彼女が顔を引き攣らせて逃げ出そうとするが、そんなことを許すはずもなく。

「仕置きが必要だな？A」

『え』

顔色を変えたAを抱き上げ、歩き出す。

『え、ちょ、何？どこ行くつもりですか！？』

「その辺だ」

『逆に怖いんですけど！？ルクさ…いない！？』

空気を読むのが早いルクはすでにいない。
愕然としているAの唇を掠め取り、見下ろす。

「俺の前で他の男のこととは、余裕だなA」

『えっ！？違いますよ！ちがう！』

吸血鬼のくせに感情豊かだ。今までの淡々としていた態度が嘘のようなだな。こっちが素なのだろうが。

「安心しろ、優しくする」

『何を優しく！？安心出来ないんですけど！？』

「言っていいのか」

『アッ。やっぱり言わないでください』

「大人しくしていろ。落とすぞ」

別に落としていい…と呟いたAをじ…、と見下ろせば、彼女は視線を泳がせて小さく縮こまる。

「別におまえが嫌がる真似はしない」

『それは知ってます…でも、』

「でも？」

『…、なん、か…その…気恥ずかしいというか…』

「…」

『うわぁ！？』

尻すぼみの言葉を耳が拾う。
ぐい、とAを空に掲げ、見上げる。

「俺は、おまえにちゃんと好意を伝えたい。俺の気持ちを知ってほしい。おまえにもっと触れたい。やめろと言われてもやめない」

『、』

「Aが好意に慣れてないことは理解している。それを求めてこなかったことも分かっている。だが、俺は伝えたい」

きらり、と僅かに煌めくアメジスト。

「だから、それを怖がらなくていいんだ」