終天に巡り逢うⅣ (ページ29)

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『クリスマスのあの日、死ぬことなんて怖くなかった。私は自分の命に価値なんて見つけてなかったから。まぁ、生き残ったけどね』

「何故」

『んー。タチの悪い神の悪戯かな？』

そう言ってAは遠くの、俺が飛ばされて来た方向に視線を向けた。

『…血を吸え』

腰に提げていた武器…吸血鬼の一級武装としては珍しい日本刀を引き抜き、一閃したAは…白虎をかき消した。

「A」

『ウルド様！』

いつの間にかAの真横に立っていた、あの褐色肌の吸血鬼を彼女は瞳を輝かせて見上げる。

「いつまで時間をかけている。長いぞ」

『そんなにかかってました？すみません。思い出話に花が咲いて』

ウルドと呼ばれた男はこちらを一瞥する。
待て。アイツの相手をしていた他の奴らはどうした？

「他の人間どもに集まられても鬱陶しくてかなわん。早く用を済ませろ」

『はーい』

「俺の仲間はどうした！？」

すると、煩わしそうにウルドは俺を見る。

「…ふん。Aは助けなかったくせに、あの人間どもは心配するのか」

「っ！うるせぇ！」

『ちょっとウルド様。蒸し返さないでくださいよ』

「おまえがぞんざいに扱われたのに？」

『いつの話してんですか。もう５年以上前ですって。時効でしょ』

「気に食わんな」

『うえー』

「殺すか？」

『やめてくださいよ。私が来た意味無いじゃないですか。ウルド様は大人しくしててください。絶対に手を出さないでください。出したら暫く口聞きませんからね。わかりました？ダメですよ？絶対にダメですよ』

「…ちっ」

仲が良さそうに話している。Aがあんな顔で、あんな口調で話しているなんて。俺とは、あんな風に話したことはなかったのに。

「グレン！！」

と、深夜や他の仲間たちがぼろぼろの状態で現れる。

「…ぇ、」

「A、様…？！」

小百合や時雨がAを見て大きく瞳を見開いた。深夜達も動揺している。

「な、なんで彼女がここに…！？」

「生きて！？」

口々に叫ぶ深夜たちにAは鬱陶しそうな顔をした。

『あー面倒臭いことになってきたー。ウルド様なんでこの人達を気絶させてくれなかったんですか、もう』

「殺すなとお願いされたからな」

『はい』

「そこまで加減する方が難しい」

『えー…そっちかぁ…納得するようなしないような…まぁ納得かなぁ…そうだよなぁ…ウルド様ならサクッとグシャッて出来ますもんね。瞬殺択一か』

米神を押さえて宙を仰ぐA。