終天に巡り逢うⅣ (ページ23)

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「吸血鬼の襲撃だ！行くぞ！！」

突然起こった襲撃。こんな情報はなかったというのになぜ突然。
…ああ。なんだか嫌な胸騒ぎがする。

「なんで急に襲ってきたのかな」

「わからねぇ」

隣を走る深夜のそれに、苦虫を潰した顔でそう返す。

「まぁ、殲滅しちゃえばいいだけの話なんだけどね」

「！」

と、そこで俺を襲う強烈で明確な冷たい殺意にぞくりと背中が粟立つ。

「…なんだ？」

土煙の中に見える人影。チラリと垣間見えたアカ。
吸血鬼だ。

深夜たちアイコンタクトを取るとみんな散り散りになる。

「…それが、貴様の大事な《家族》とやらか」

「ああ？」

煙が晴れ、そこにいたのは吸血鬼の中では珍しいであろう褐色肌に金髪の、酷く整った顔立ちの男。
そいつから俺を蔑むような、それでいて今にも殺してやりたそうなほどの強い殺意を感じる。

「それのために貴様は何を犠牲にした？」

「なんの話だ」

「わからないのか？それともわかりたくないのか」

「だーから、何言ってんだよ。永く生きすぎて耄碌したか？」

「家族を見捨てた貴様の気持ちなぞ、知りたくもないが」

《家族》と言った。《見捨てた》とも言った。それに当てはまるのは、この世でたった一人だ。
まさか、こいつ。

「っまさかお前…Aを知っているのか！？」

「貴様ごときが、彼女の血縁だったなど…家族であったなど、とんだ悲劇だな。…いいか、人間」

姿が消える。

「っ！？」

「グレン様！」

一瞬。刹那。
１秒にも満たない時間で男は俺の目の前に立っていた。

「貴様がAの家族であったことを語るな。彼女を語るな。…貴様なぞにその資格はない」

「っお前！！」

「本当なら今ここで俺の手で縊り殺してやりたいが…」

「人の話を聞けよ吸血鬼！！」

抜刀し、斬り掛かる。
だが男はたった日本の指で俺の刀を受け止めた。つまらなそうに、こちらを見る。

「弱いな。力を得てこれか」

「っんだと！？」

「彼女の方がずっと強かった」

「なんで、お前は…アイツを、Aを知ってる！？」

こいつはAを知っている。なぜ吸血鬼なんかがアイツのことを知っているんだ。

「鬱陶しい。彼女の名を貴様ごとぎが口にするな、人間」

「俺はアイツの！」

「兄…とでも言うつもりか？勘違いも甚だしいな。散々傷付けて、挙句見捨てたくせに」

「っ」

なんで。なんで。こいつがソレを知ってる。

「…時間だな」

ーゴッ

瞬間、凄まじい衝撃が俺を襲った。