9話 ページ10
「ちゃんと洋服は持ちましたか？歯ブラシは？制服は？」
母上は朝から口うるさく何度も聞いてくる
「はい、大丈夫です母上…」
ここの所どうも母上は過保護だ。
前世の記憶を思い出して起きた日、ついでにと母上も一緒に朝食を取ったのだ。
いつもは純血がどうとかブラック家は誇り高き…と演説するかのように聞かせる母上が、なんと私の話を聞いてきたのである。
母上とそのようにお話をするのは久しぶりで庭の花が見ごろだとか、クリーチャーが作ってくれたアップルパイが美味しかったとか、淑女にあるまじくずっと喋ってしまった。
私はもともとおしゃべりな性格なのである。
しかし母上は笑顔で、時には相槌をして、話を最後まで聞いてくれた。
それからというもの母上とは1日1回お茶をしながらおしゃべりするのが日課となった。
母上の隣でクリーチャーは嗚咽を漏らしながら言う
「Aお嬢様、どうかお達者で…！クリスマス、夏休みには帰って来て下さいね…ぐすっ」
大好きなクリーチャーともしばらくお別れだ。
あら…私も涙が…
「えぇ、もちろんよ。その時には私の大好きなクリーチャーのアップルパイを食べさせてね」
淑女たるもの泣きそうになるのを堪えて笑顔で言った。
ボォーッボォーッ______
汽車の音が響く。もうすぐ出発だ。
すると母上が私を抱きしめた。
「どうか神の御加護がありますように。元気に過ごすのよ」
本当に、最近の母上はおかしい
これじゃあ…まるで…
汽車から外を見る。
クリーチャーが尚も手を振っていた。
私は…A・A・ブラック。
レギュラス・A・ブラックであり、そうでない。
この世界は私の生きる世界ではないはずよ。
汽車が走り出しても私は通路にいた。
だってどこも満席なんだもん
早く中に入って席を取ってればよかったかも
ブラック家の私が譲れと言えばみんな退いてくれるが、前世の頃を思うと、さすがに申し訳ないし…
いや、典型的なスリザリンになるんだから、やった方がいいのかも？
「やぁ、綺麗なお嬢さん。君、もしかしてシリウスの妹さん？」
どうしようか考えていると後ろから声をかけられた。やけに陽気で大きい声。
ジェームズ・ポッター？
ハリーポッターという物語の重要人物であり、兄シリウスの大親友。
ということは…
その後ろに自分の兄の姿をとらえる。
今1番会いたくない人物に会ってしまい、思わず顔を顰めてしまったのは許してね
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作者名：胃痛のアリエッティーナ | 作成日時：2017年8月8日 7時
