その瞳に世界が"移る"時 [ハリー・ポッター] (ページ26)

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24話ページ26

学校裏の落葉松の小枝からは霧氷がぱらぱら散り、かつて前世で見た桜の落花のような光景が広がっている。

季節は12月に入り、冬用のローブそれでもコート無しでは外に出れないぐらい寒い日々が続いた。

Aはハァと息を吐き、それが白くなるのを見つめた。無意識にシシーからホグズミードのお土産で貰った淡い青い鳥の手袋を摩る。

視線を上げれば、先ほどからピリピリした様子のスリザリン生達とすれ違ってばかりだ。

__それもそのはず。

今年も寮対抗クィディッチ杯のグリフィンドールvsスリザリンの試合で負けてしまったのだ。

私は行かなかったが、その日バーティが悔しげな様子で帰って来たのを鮮明に覚えている。

ヘーゼルナッツのように柔らかい色合いの髪。白い肌にそばかすが無数散っている顔に青筋を立てて怒っている友人、バーテミウス・クラウチ・Jr。

次期魔法省大臣と名高いクラウチ氏の1人息子だ。

そう言えばバーティはクディッチ観戦が趣味だったなぁと呑気に思い出した。

次があるさ、と適当に慰めたらバーティは「うぅ…」と唸り机に突っ伏してしまった

それも一瞬のことで、すぐさまバーティは立ち上がり、腹いせにどんな嫌がらせをしてやろうかと早速悪巧みをし始める

ワクワクを抑えても抑えても微笑がこみ上げてくるようだ。

心配して損する。普段は好青年なのだが、これを見たら狡猾なスリザリンに相応しいのがよく分かる。

Aは肩を竦めて、やめておきなさいと頭を軽く叩いた。こういうのはすぐにバレるのがオチなのだ

彼とすっかり気を許した(？)過程は長いから置いておくとして。

バーティが言っていた、優秀なシーカーさえ見つかればスリザリンも勝てる見込みがあると。

霧がかかったように薄らぼんやりとした記憶、確かレギュラスは優秀なシーカーだった。

つまり私というイレギュラーがいるから今後スリザリンは勝てる見込みがないと。そういうことだ。

ちょっと腹が立ったが、そもそも箒に乗るのは好きだが体を動かすのは苦手だし、箒に乗ってクディッチなんてしようものなら母上からもれなく吠えメールが届くので、清く諦めた。ごめんねバーティ

しばらくAは学校裏を目を凝らしながら歩く
ふと、日が当たらない木の下に、凛と咲いた赤い小さな花を見つけた。

誰にも見られないようにそっと上質なハンカチで摘むと鞄にしまい、なんでもない風を装って目的の場所に急いだのだった。