その瞳に世界が"移る"時 [ハリー・ポッター] (ページ23)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:76,092 hit

21話セブルスside ページ23

何かと噂に疎いセブルスは魔法界の純血貴族の代表格であるブラック家について一般的な知識程度しか知らない。

優秀には行かないが品行方正な娘。

目の前にいる、この男と同じ色素を持ちながら、全く真逆の1学年下の後輩だ。

廊下ですれ違うことはあれど、2人きりで話したことはない。どこかエキゾチックな雰囲気を醸し出し取り巻きに囲まれたこの後輩はタダでさえ近寄り難いのだ。

リリーが駆けつけて来たのには驚いた。

最近、彼女を避けていたので顔を合わせたくなくて、咄嗟に俯いてしまう。一瞬、リリーが悲しそうな顔をしたような、そんな気がした。

彼女は名前の通り純粋で可憐、沢山の人に好かれている。

太陽のように笑い共にいるだけで、人々を笑顔にする愛しい幼馴染。

スリザリンという道を選んだ冴えない自分とは真逆で、彼女は多くの人間に愛されるべき存在なのだ。

認めたくはなかった。
彼女とずっと一緒にいれると思っていた自分はつくづく馬鹿だなと思う。

そろそろ、現実を見なければいけない____。

目の前でジェームズが嘲笑う。
その笑い方もセブルスにとっては実に不快で堪らなかった。

__お邪魔虫は脱兎のごとく逃げていった。怒り狂ったマダム・ピンスが叱りつけに来たのだ。

室内はいよいよシンと静まり返る。

沈黙の後、リリーは大丈夫かと聞いてきた。綺麗なエメラルドの双眼がこちらを戸惑いながら伺う。

そんな澄んだ宝石で僕をみないで____。

彼女の美しい鮮やかな緑色を帯びた翠玉は、強く光を放ち傷ついた心の中に侵入してくる。

これ以上、穢い自分を見て欲しくなくって彼女を突き放す。次から次へと心無い棘のような言の葉が紡がれて行く。

あぁ、違うんだ。そうじゃないっ

気づいたら手遅れで彼女は既に目の前からいなくなっていた。

__残されたのはパールグレーの宝石。

"A・A・ブラック、目的はなんだ。"

単刀直入に聞いた。

Aは苦痛そうな表情を浮かべる。答えを聞いたらすぐに解放して口頭で注意するだけのつもりだった。

意識をAに向ける。
彼女の唇が僅かに開いたその時____。

"エクスペリアームス"

突然、バシッと杖が吹き飛ぶ。
何事かと、赤くなった手をさすり戸口の方に視線をやれば…

舞台から降りたはずの"役者"が腕を組み、舞台袖で涼し気な表情を浮かべ王者に君臨していた。