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「誰と戦うんだよ」
『色々ですよ。色々』
あ、やばい。鳥肌が。
と言うAと視線が合う。
宝石のようなアメジストの瞳は、純粋に美しいと思った。どこか高貴さを漂わせるそれを、誰彼構わずに見せるのも勿体ないと。
…そんな感情が湧いてくるとはおかしな話だが。
「A」
『はい？』
「おまえは今日から、この屋敷に住め」
『、は？』
何を言ってるんだ、と彼女の声が言っているが無視する。
「私専属の使用人にする」
『え、は…？』
意味が分からない、といった表情のA。
「衣食住は保障してやる。その代わり私に尽くせ」
『え…いや、あの…別に…』
「尽くせ」
えええ…と小さく声を漏らしたAは助けを乞うようにルクを見る。
「いいじゃん、別に。路地裏生活からの高待遇だろ」
『いや…その…別に路地裏生活に不満とかない…』
「ま、ウルド様の決定には逆らえないしな。甘えとけよ。使用人だけど」
『というか、そもそも使用人いるの？と言いますか…』
「使用人は名目で、ただの暇つぶしだ」
『あはー。デスヨネー』
暇つぶしとは言ったが、本音はどうだろうか。自分でも正直よく分からない。
そう考えながら、微妙な顔をしているAをじっと見つめる。
それでも、彼女を手放すのは惜しいと思う。だから、わざわざ襲われやすい所に放り出すのも気分が悪い。なら自分の手元に置いておけばいい。
それに、気になることもある。それを彼女は自覚しているのだろうか。それとも隠しているのか。
考えるだけ無駄だと思ったのか、Aは諦めたような表情で一つ息を吐くと私を見据え、口を開く。
『…分かりました。よろしくお願いします、ウルド様』
「ああ」
「良かったな」
『…はぁ、どうも？』
そう言ったルクの言葉にAはなんとも言えない顔をする。
普通、あんな最低限の生活から離れられるなら喜ぶものだと思うのだが。私のこともきっと知っているだろう。ここロシアの統治者ということも。なら庇護下に置かれる方が喜ぶものではないのか。自分の命をある程度保障されるのだから。彼女の考えていることはよく分からない。
「やる事は追って知らせる」
『分かりました』
「…」
『…』
「…」
『…それで、今は何をやればいいですか？』
沈黙の後にそう問われ考えるも、今は特に何も思いつかない。
「ついて来い」
立ち上がり部屋を出る私の後をAは大人しくついてくる。
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作者名：レイ | 作成日時：2021年5月2日 22時
