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「ふ、ふざけ…」
『ふざけてないよ。私は本気だ。いくら馬鹿なおまえらだって、このままナイフを動かせばどうなるか分かるよなぁ？』
「や、やめ…」
Aは更にナイフを食い込ませる。それを見た人間たちが顔を青くして、狼狽えた。
『…私は、たくさん命を奪ってきた。だから今更奪うことに何も思わない。そうすることにもう、心は動かない。そう思えるだけの心は、既に死んだ』
彼女は淡々と言葉を続ける。
「あ…」
『さっき私は優しいって言ったけど…本当は残念ながら、私は優しくないんだ。おまえらが今後も私に喧嘩を売ってくる予定なら、潰しておいた方が静かになるね？一々相手するのも面倒だし』
さぁ、どうする？
と、酷く優しい声音で尋ねるA。その声音は優しいものなのに、温度は一切ない。本気だ。
「っゆ…許して…っ」
『聞こえない』
「もう、しないから…っ」
「だから、彼からナイフを離してくれ！！」
『他人に物を頼む態度がそれ？あー、残念。ガッカリだなぁ』
「ぅっ…うわぁぁぁぁ！？」
突然叫びだす男。
半狂乱にジタバタをAの下で暴れる。
何が起こっているのか分からないような表情で、男の仲間はそれを見る。
「なっ、何をしたの！？」
『幻術を見せてる。とっても怖い幻術だ。少ししたらコイツ…壊れちゃうねぇ？』
と、酷くどうでも良さそうな声音で告げたそれに人間どもは凍り付いた。
「や…っやめて！！彼は私たちの大事な仲間なのよ！？」
「そうだ！！」
『えー？だってさぁ』
白目を剥き、泡を吐く男を見下ろしながらAは言う。
『大事な人が死ぬのは…面白いショーなんだろ？』
と、彼女は嗤った。
「っあ、…おまえ…っ狂ってる！！」
『まぁ否定はしないけど。兄さんに比べたら私は間違いなく狂ってるだろうしさ。というかまぁ、あの人が弱くて甘すぎるだけな気もするけど』
「この異常者め！！」
『うん。普通の感性はとっくの昔に棄ててしまったんだよなぁ』
ぱちん、と指を鳴らしてみせればAの下にいる男は動かなくなった。
心臓の音も聞こえない。
死んだ。Aが殺したのだ。
「あ…ああああぁぁぁあ！！」
「いやぁぁあぁぁぁぁぁ！！」
絶望からか、人間どもは悲鳴を上げた。それをAは無感動に一瞥する。
『ああ、ほら。おまえらが自分の実力を見誤るから、驕るから…大事なお仲間が死んじゃったねぇ？』
「許さない！」
「殺してやる！」
「この人でなし！」
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作者名：レイ | 作成日時：2021年5月2日 22時
