終天に巡り逢う (ページ34)

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それを見て、吸血鬼らしいと思う。
彼らは血にしか感情を揺さぶられない。それ以外に興味を示す奴はただの変人だという。

『う！？』

ぐいっと引っ張られて机に押し付けられた。
いやぁ、眼福ですね。
ウルド様の顔を見上げながら、くだらないことを考えた。
いやだって、この人本当に綺麗な人だからね？こんな体勢にされちゃうとドキドキしちゃうよ。
…まぁしねーけど。一般論だよね。憧れの机ドン！みたいな？
でもこれ、ただの捕食者と獲物だから。物理で喰われるから。最悪死ぬから。

「おまえ…今まで誰かに牙を許したことはあるか」

『いや無いですよ』

「そうか」

つつつ…と指先で首筋をなぞられ、思わずというか本能的に身を捩る。だって急所だもん。

「怖いか？」

『はい？』

「私が怖いか？」

『…なんでそういう話になるんですか？私がいま身体を捩ったのは、ほぼ反射的にですよ。そこ急所ですからね？そこ引き裂かれたら即死ですからね、私』

「そうか」

と言ってウルド様は顔を近付けてきて、首筋に埋めるとそこを僅かに舐める。

…舐める！？

『っひぁ！？』

思わず声を上げてしまった。
いや誰だって上げるだろ。ビビるわ。
一瞬彼は動きを止めたが、すぐにまたそこを舐めるとゆっくりと牙を穿った。

『…っん』

前回とは違ってそれはどこか優しい。しかし同時にゆっくりと、丹念に甚振るようにも思えた。
ぞわぞわとした感覚。命を取られているのに、まるでそれが至福のような奇妙な錯覚を起こさせる。

『…ぁ…っ！』

これは、まずい。引き摺られてしまう。
サラリとしたウルド様の髪を掻くように頭に触れて、引き剥がそうとするが無理だった。

『…っは、ぁ…っ』

猟奇的なのに酷く優しげなそれは私をおかしくする。
耳朶に響く血を啜る音。首に触れる冷たい唇と、肌を突き刺す牙に理性を狂わされそうになる。

『…っと、…に…無理…っ！ウルド、さま！』

「、」

名前を呼べば、漸く彼は牙を抜いて顔を上げた。
唇についた私の血を舌で拭う姿は妖艶だ。
血を失い、ぐったりとする私を抱き上げると彼は以前のように自身の私室へと私を運ぶ。

どうせなら私の部屋に運んでくれませんかねぇ。

と内心毒づく。

「寝ていろ」

『…そうします…』

私に部屋与えた意味あるの？すぐそこなのに。
気怠げに目蓋を閉じると、頬にかかった髪をどかされた。

「…」

髪フェチですか？
無言で髪を弄ってくる彼にそう思いながら眠りに就いた。