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そうだった時期を思い出す。
血腥い場所。漂う血臭。肉を裂く感触。簡単に裏切る人。一瞬で変わる景色。
『私は臆病なので…自分の身を守ることが大事なんですよ』
「…」
と言えば、ウルド様は何かを考えるように目蓋を閉じた。
「ではおまえは力が欲しいのか」
『さぁ？大して興味もないですけど…その辺の人間よりは既に強いので。まぁ、吸血鬼には敵いませんけどね。それでも、此処にいる限りは襲われないでしょう？貴方の所有物だから』
「…」
『ああでも、あの人はどうなんでしょうね。アリシア様ですっけ？ウルド様大好きー！な人』
「アレがおまえに手を出すと？」
『まぁ間違いなく目障りでしょうねぇ。知ってます？恋する乙女ってすっごく怖いんですよ？私知ってますから』
誰って？あの人しかいない。
柊真昼しか。
あの人も恋愛拗らせオネーサンだったからな。
と、彼女を思い出す。
恋する女の子の一人であった彼女は楽しそうに、幸せそうにいつも兄さんの話を聞かせてくれた。
…でもまぁ、その話に私が共感することは無かったのだが。しかも最終、兄さんに取り憑くという。単純に怖いだろ。
「くだらん。吸血鬼にもなってそんなものに踊らされるとは」
『ウルド様はいないんですか？』
「愚問だな」
鼻で笑った彼を見つめながら思い出す。
でもあれ…確かリーグが、ウルド様はジェニファーを追いかけて死のうとしてたところを真祖に吸血鬼化されたって言ってたよなぁ。ほんとかどうかは知らないけど。
「…だが、」
『？』
じ、とこちらを見つめるウルド様に首を傾げる。
「おまえには興味がある」
『…血が美味しかったんですか？』
「まぁ、そうだな。それもある」
やだぁ。意味深発言やめて。
どうせリーグに繋がってんだろって言いたいんだろ？繋がってねぇよ？あんなのと繋がりたくねーよ？生理的に無理。
ーやぁ、Aさん。今日は何するの？
とか行く先々で現れたあの自称パパのストーカーを思い出す。
アイツなんで私の行動把握してたの？シンプルにキモい。
「…それで？おまえは私に何をくれる？」
『え。えー。あげれるものなんて血くらいしか無いんですけど』
「なら此方に来い」
まじかぁ。血を吸われるのかなぁ。
ちょいちょいと手招きされ、内心溜め息を吐きながらも大人しく側に行く。
「…」
さらり、と肩にかかっていた髪を退けられて露わになる首筋。ウルド様の瞳孔が開き、吸血欲を真っ赤な瞳にありありと宿した。
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作者名：レイ | 作成日時：2021年5月2日 22時
