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「そうですわ!身の程を弁えない家畜の女なのです!!」
「へぇ〜詳しく聞かせてよ。アリシアちゃん」
たまたま来た通信に出た途端キーキー喚く、一応妹のアリシアの言葉を聞いて、楽しそうなことが聞けそうだと深い笑みを浮かべる。
そんな僕の心情を知らない彼女は鬱憤をぶちまけるように矢継ぎ早に言葉を続けていく。
「最近、ウルド様がご自身の屋敷で家畜を飼い始めましたの!その家畜の女がウルド様を誑かしているのですわ!!なんて卑しい!!」
「あのウルド様が家畜…しかも女の子を囲ってるの?わぁ、びっくり!」
心底驚いた。あのウルドが、人間の女の子を自分の屋敷で囲っているという。
永く生きてきて、今更恋でもしたのだろうか。ありえないけれど。
「私はもう耐えられないのです!あの女のせいで私はウルド様の屋敷にも入れない!あの方に無視までされているのですわ!」
「そりゃあ大問題だねぇ」
ウルドが大好きな彼女にとっては由々しき事態だろう。僕のパパが面白がってウルドに恋するアリシアを吸血鬼にしたが、ハッキリ言って彼女は馬鹿だ。ウルドに対する執着心…恋心からずっとアタックしているがまるで無視されている。なのに諦めない。
どうせ今回も、その家畜ちゃんに突っかかったのだろう。ウルドの庇護下にある子なのだか、そんなことをすればどうなるのか考えなかったのか。まぁ、その頭を持っていないだけなのかもしれないが。
「家畜如きがウルド様とお話することすら烏滸がましいのに!」
「その子、綺麗な子なの?」
「まさか!私に比べれば平凡な女ですわ!黒髪に紫色の瞳の日本人ですの」
「…へぇ」
ふと一人の人間が脳裏に浮かんだ。彼も黒髪に紫色の瞳だ。確か彼には死んだ妹がいたはず。そんなはずはないだろうが一応と思い、その名前を聞いてみる。
「その家畜ちゃんはなんて言うの?」
「…名前は確か……、A。一瀬Aですわ」
「あっはは!」
思わず笑い声が出てしまった。
まさか!まさかこんなことがあるだろうか!なんていう運命の悪戯だろう!
彼の妹がウルドの元に居るなんて!
「…フェリド様?」
笑う僕を見て怪訝な表情を浮かべたアリシアにニコリと笑みを向ける。
ウルドは気付いているはずだ。Aという女の子の身体から漂う匂いに。だから側に置いているのだろう。
…だが本当にそれだけなのだろうか。もしも、はないのだろうか。
「あはぁ」
愉しくなってきた。
にんまりと、笑みを深くした。
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作者名:レイ | 作成日時:2021年5月2日 22時