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ああ、イラつく。
「邪魔よ!」
目障りな家畜共は私を見て蜘蛛の子を散らすように、慌てた様子でどこかに逃げる。その姿もカンに障る。
「なんなのよ、あの家畜!!血にしか価値の無い存在のクセに、あの方のお側に居るなんて!!」
思い出すのは私が最も敬い、そして愛するウルド様。
美しい顔に、鋭い光を放つ真っ赤な瞳。すらりとした手脚に魅惑的な声。誰も寄せ付けない空気を纏う、孤高の王。
事実、彼は今まで側に誰も置いてこなかった。第五位始祖であるキ・ルク様はそれなりに親しそうだが。
…それなのに。
「あのっ…!家畜!」
ウルド様が最近飼い出したという、家畜…それも年頃の女。特に美しいという容姿ではない。私の方がずっと美しく魅力的なはずだ。なのに何故、あの方はあんな家畜なんかを側に…それもご自身の屋敷に置いているのか。
「それなのに何故私が屋敷の出入りを禁止されなければならないの!?」
あの家畜が何か告げ口をしたに違いない。でなければ私が罰を受けるはずがない。
忌々しい女だ。ウルド様を誑かすなんて。
ふと前を見れば、ちょうどいま考えていた愛しい方が前方の物陰から現れ声を掛けようと口を開く。
「ウル…」
「最近は腕を上げたのか」
『いや…流石にそんなに早くは無理です』
その後ろをあの家畜が歩きながらそう話している。
「ならもっと精進しろ」
『これ独学でどうにかなるもんですか?』
「私に聞かれても知らん」
『…そうですか…まぁ、今までも独学ですし…頑張ります』
彼女はこちらに気付くことは無かったが、ウルド様は気付いていた。気付いていたのに、一瞥すらせずあの家畜と話していたのだ。
自分の中のプライドが傷付く。
「あんな…あんな家畜なんかにこの私が…っ!!」
ぎりり、と唇を噛み締めれば血が流れたがそんなことはどうでも良かった。
この屈辱をどうしてくれようかと悩み、そして思い付く。
「そうだわ。あの方に相談しましょう」
彼ならきっと何か良い案をくれるはずだ。
すぐ様自分の屋敷に戻ると通信を繋ぐ。迅る心を抑えながら、早く出てくれと心の中で念じる。
「はーい。なにー?」
「フェリド様!聞いてくださいませ!」
銀髪の麗人ーフェリド・バードリー第七位始祖。私と同じ父を持つ兄だ。
軽薄な笑みを浮かべて首を傾げている彼に縋るように言葉を続ける。
「ウルド様の屋敷を出入り禁止にされてしまったのです!これも全部あの家畜のせいですわ!」
「家畜?」
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作者名:レイ | 作成日時:2021年5月2日 22時