終天に巡り逢う (ページ2)

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「よぉ、A。楽しそうだな」

『えー。いやいや待って。この状況でそう思います？なーんも楽しくないですけど。襲われかけたんですよ、私。見て。多勢に無勢ですよ？』

「でも返り討ちにしてるじゃん」

『そりゃー…まぁ、この程度に負けるのはちょっと』

ルクが親しげに声をかければ、Aと呼ばれた娘も言葉を返す。
彼女の下にいる男に視線をずらせば、こちらを見て怯えていた。

『よっこいせ』

「ばばあかよ」

『もう歳なんで労ってほしいですよね～』

「おまえ確か、１８歳だろ？」

『あれだ。精神年齢がもう６０歳近いんですよ。おばちゃんです』

そう言いながら立ち上がる彼女は、足蹴にしていた男を冷たく見下ろす。

『次、また何かしようとしたら骨折るからな。それともナイフでぶすりの方がいい？選ばせてやるよ』

「はは。こえー」

『襲われる私の身にでもなってくださいよ。ちょっと脅してた方がいいでしょ』

「おまえ、見目はいいもんな」

『こんなちんちくりんに欲情する意味が分からない。ロシア人美女の方がいいと思うんですけど。いや、勿論襲うことを推奨するんじゃなくて』

自身をちんちくりんと称する女を見る。
腰まであるややウェーブがかった黒髪。宝石のような煌めきを放つアメジスト色の垂れ目がちな瞳。東洋人らしくやや小柄だが、なだらかな曲線を描く身体つき。
全体的にみて整っているだろう。欲情の対象になってもおかしくない美しい娘だ。
と、考えて気付く。

何故私は今、この娘を美しいと思った？

「こいつらどうします？ウルド様」

「…放っておけ」

『あのー。私もお咎めなしですか？』

「おまえは襲われた側だろう。何故罰を与える」

『良かったー。ありがとうございます』

配給ストップとか言われたらどうしようかと思った。と呟く女。
この女は吸血鬼を恐れる素振りを見せないな。ルクと関わりがあるからか？

『ところで何故ルクさ…さま達がここに？』

「不愉快な声が聞こえたからな」

『…あー。耳いいですもんね。すみません』

「で、おまえは怪我とかしてないわけ？」

『ご覧の通りピンピンしてますけど』

確かに、怪我などはしていなさそうだ。先程の身体裁きといい、何かしていたのかもしれない。

『流石に、あんな一般人に負けるのは呪術家出身としてはプライドがね』

「呪術家？」

と、私が聞き返せば女は頷いて言葉を続ける。