終天に巡り逢う (ページ3)

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『そうなんです。私、元々日本の呪術家出身なんです。いち当主候補として訓練されてたのでその辺の奴らよりは強いと思うんですけど…というのもあってこいつらに負けるのは私のなけなしのプライドが許さないというか…』

なるほど、と頷く。
それならば先程の身体裁きにも納得だ。

『ちなみに勿論何も企ててないですよ？毎日ダラけた生活を送っているので。ニートライフ最高。ニートライフ万歳』

緩慢な動作でナイフを捨てる娘を見下ろしていると、それに気付いた彼女が不思議そうに私を見上げるのをジッと見下ろす。
やがて女は私の行動に怪訝そうな表情を浮かべた。

『…？なんですか？』

「おまえ、名は」

私の問いに彼女は瞬きして首を傾げる。

『え？名前。名前は…えーと、一瀬Aです。あ、Aが名前です』

何故自分の名前を悩むのか。

「そうか。ではA、ついて来い」

そう言えばAという女は更に首を捻る。

『…ん？んんん？』

「お？」

くるりと踵を返して歩き出す私を困惑と好奇の視線が貫く。
後ろでルクとAがコソコソ話す。

『えっ、ちょ…なに？私何かしました？』

「知らね。まぁ悪いようにはされないんじゃない？」

『いやいや、怖いんですけど』

なんとかしてくださいよ。
と言っているAをルクは軽くあしらう。

「諦めろって。王様がついて来いって言ってるんだからさ」

『うそぉーん。やばいじゃないですか。私死ぬかな？齢１８歳にして無事死亡。悲しすぎる』

「ドンマイ」

『ああ…もう少し長生きしたかったな…グッバイ我が人生』

などと小さな声で話している二人に視線を向ければ、諦めたようにとぼとぼついてくるAとは対照的に楽しそうな表情のルク。

『あの…どこに、』

「私の屋敷だ」

『…あー……屋敷かぁ…』

やべぇ。まじで死ぬのかな。
と小さな声で言ったAに視線を向ける。

「別に殺さない」

『なら何故？』

「…さぁな」

ふい、と視線を戻す。
実際に何故この娘を連れて行こうと思ったのかは分からない。ただ、なんとなくだ。その辺に捨て置くには勿体ないと思っただけ。
あとは、彼女から気になる匂いがするからだ。それはかつての、私の。

『…うーん。意味わかんないなぁ…』

と、小さな声を漏らし、腑に落ちないといった表情で私の後ろを歩くAを一瞥し、屋敷へと向かった。