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104.帰宅 ページ6

翌朝。

千寿郎くんとご飯を作っていると、玄関の方から物音がした。

思わず千寿郎くんと顔を見合わせる。


「Aさん、行ってあげてください」

その言葉に背中を押されて「ありがとう」と答えると手を止めて玄関へ向かう。

玄関に続く廊下に出ると履き物を脱いで歩いてきていた杏寿郎さんとばったり出くわした。


「A!」

三週間振りに聞く彼の声にぐっと胸の奥が熱くなる。

「杏寿郎さんっ」

互いに歩み寄って、どちらからともなく抱き締め合う。

暖かくて心地よい。
久しぶりに杏寿郎さんの香りに包まれた。


「お帰りなさい」

「ただいま」

ぎゅっと抱き締めていたら、頭に口付けられた。

驚いて顔を上げれば今度は額に口付けられる。

「えっ?ちょ、ちょっと!」

なんて声を上げると今度はそれが唇に落ちてくる。

「っ…!」

味わうかのような少し長めの口付けだった。

漸く放してくれた彼に「もうっ!」と怒るけれど、楽しそうに「ははは!赤いな」と笑われた。


「朝からからかわないでください」

「む?朝でなければ良いのか?」

真っ直ぐな目が私を覗き込む。


「う……。そ、それは………その…………」

言葉に詰まって視線を逸らせば、また抱き締められる。


「ずっとAに逢いたかったんだ。少しぐらい許してくれ!」

何処か切ない声で杏寿郎さんがそんなことを言う。

それは接吻するのを許して欲しいってことなのかしら?

接吻自体は嫌ではないけれど、朝から沢山されるとは思わなかった。
もう少し加減というものを知ってほしい。


それでも、逢いたかったのは私も同じだ。


「許しません………」

ぽつりと呟けば「よもや!」と大きな声がした。
けれど構わず続ける。

「私だって逢いたかったんですよ。ずっと心配だったのに、何も連絡がないなんて。………途中で文の一つくらい下さったらどうですか?」

むすっとして訴えると、穏やかな声が帰ってくる。


「…分かった。次回からはそうしよう」

ぽんっと抱き締められていた手が肩に置かれた。


「約束ですよ?」

彼を見上げる。

「あぁ!」と返事をした彼が私の手を取ると手の甲にちゅっと口付ける。


「約束だ!」

彼がこうやってしてくれた約束は、いつも叶えてくれていた。


だから私は笑って頷いた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:アニメ
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月見(プロフ) - 莉子さん» 可愛らしく書けていてよかったです!作者も早く二人には祝言あげて欲しくてうずうずしています!でもきっとあともう少しです(^^) (2021年3月10日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 夢主ちゃん可愛いですね( ´ ▽ ` )早く祝言あげて欲しいですね。。。 (2021年3月10日 20時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» ありがとうございます!夢主ちゃんには甘い煉獄さんを書いてみたら、自然と優しくなりました(*^^*) (2021年3月1日 12時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 煉獄さん優しい。。( ; ; )月見様の煉獄さん大好きです。 (2021年3月1日 12時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!プロポーズのシーンは悩みながら書いたので、そう言って貰えて嬉しいです!夢主ちゃん、少しずつ成長してます(^^) (2021年2月26日 12時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月見 | 作成日時:2021年2月4日 23時

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