140.お酒 ページ42
「酒屋さんが、いつも買ってくれてるお礼にと、良いお酒を下さったんです。」
月明かりの元、二人並んで縁側に腰かけて江戸切子の赤いグラスにお酒を注ぐ。
「このお酒をお店で扱うか悩んでいるそうです。常連さん何名かに配っているそうで、感想を聞かせて欲しいと言ってました」
「どうぞ」と手渡して、二人で乾杯する。
口に一口含むと、すっきりした味わいだった。
けれど、後味がほんのり甘くて美味しい。
「うまい!」
いつものように大きな声で言う杏寿郎さんに私も頷く。
「Aと酒を呑むのは久しぶりだな」
「えぇ。このグラスを買って暫くしてから、一度呑んだきりですからね。もう二ヶ月ぐらい前ですかね」
「もうそんなに経つのか!時の流れとは早いな!」
「そうですね」
もう一口お酒を呑む。
「本当はお義父さんにもこのお酒を呑んでもらおうと思ったんですけれど、最近お酒の量が増えてるみたいだから、やめました」
「そうか…」
私が煉獄家に来たときと比べると、酒瓶の消費量が増えていた。
それに、任務前も関係なくお酒を呑むようになっただけでなく、任務にお酒を持って行くこともある。
「それとなく、減らすよう勧めてみたんですけれど、全然駄目で………」
「父上のことで君に苦労を掛けているみたいだな」
「苦労だなんて、私は思っていませんよ?まぁ、悩みはしますけれど………」
そう言って苦笑いする。
「あまりに消費が早いので、一度、お酒の瓶に少しお水を混ぜました」
杏寿郎さんが「よもや!」と大きな声をあげる。
「お義父さん、感覚が鋭そうなので流石に気付くかと思ったんですけれど、見かけに依らず酔いが回っていたのか、全く気が付いていませんでしたよ」
思い返してくすくす笑う。
「ふむ。君は突拍子もないことをするのだな」
「ふふふっ。民宿でも飲み過ぎのお客さんに同じ手を使ったことがあります」
気分がよくなってきて、手元のグラスの中身を覗き込むと二口呑む。
「私の命の恩人だから、………お義父さんには長生きして欲しくて。お酒が体に残った状態で任務に行って欲しくないんです」
私の言葉に杏寿郎さんが「むぅ」と唸る。
「さっきから父上の事ばかりだな」
そう言って、グラスに残っていたお酒を杏寿郎さんがぐいっと飲み干す。
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月見(プロフ) - 莉子さん» 可愛らしく書けていてよかったです!作者も早く二人には祝言あげて欲しくてうずうずしています!でもきっとあともう少しです(^^) (2021年3月10日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 夢主ちゃん可愛いですね( ´ ▽ ` )早く祝言あげて欲しいですね。。。 (2021年3月10日 20時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» ありがとうございます!夢主ちゃんには甘い煉獄さんを書いてみたら、自然と優しくなりました(*^^*) (2021年3月1日 12時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 煉獄さん優しい。。( ; ; )月見様の煉獄さん大好きです。 (2021年3月1日 12時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!プロポーズのシーンは悩みながら書いたので、そう言って貰えて嬉しいです!夢主ちゃん、少しずつ成長してます(^^) (2021年2月26日 12時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年2月4日 23時