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さてさて、困ったぞ。
苗字を素直に教える…?いや、そんなことをしたら、素性がバレかねない。
悩みに悩むものの、あまりにも遅く返答しても、
何か汲み取られたら、後々面倒になりそうだ。
………、
A「四ノ宮と言います、紹介が遅れてすみません」
浮かんだ名前。
母の名前の旧姓である。
太宰「四ノ宮さん、ですか。どうして探偵社に?」
A「本当は、交番へ行ったんですよ。でも、『探偵社に』と言われてしまいまして」
太宰「………それは、お気の毒ですね。旅行鞄をお持ちですが、
お疲れではないんですか?」
A「数年前から海外に住んでいたんですけど、知り合いに会うために帰ってきたんです。
流石に、飛行機に降りてから電車乗ったりもしているので、くたくたですけどね」
事実と共に混ぜた
結局は、真実に勝るものはないのだけれど。
ふと、視線に気づき、その先を追えば、
夜桜ちゃんがこちらを見ていた。
目を反らそうとは思っていないらしい。
A「あの、私の顔に何か付いていますか?」
そう問えば、『あ、いえ』と淡々と応えたものの、
太宰が茶化すように『もしかして、惚れちゃったの?』と口元を抑えて云った。
夜桜「いや、太宰さんじゃないんですから」
そんな茶化しを交わした夜桜ちゃんは、それ以降視線は感じることはなかった。
一体、何だったんだろうか。本当に。
しばらく、太宰の質問攻めにあったものの、
本当の目的を言わずに、淡々と話していれば、
先頭にいた太宰が足を止めるものだから、必然的に自身の足も止まった。
奥の方を指をさしては、『このまままっすぐ行くと目的地に着きますので』と口にしては、
手に持っていた紙切れを渡してきた。若干、見慣れているような景色で、
少し安心している自分も居たのも事実だった。
案内の礼を言えば、謙遜される。今までのことを考えると、あり得ない話だ。
内心、驚いている。
彼女を取り残すように、太宰はこの場に来た道を戻るように、
また足を動かし始めたものの、夜桜ちゃんは動く気配がなく、
別れるのに、どうしても不自然になりそうで、とりあえず声をかけようとしたとき、
『あの!』と先に声を出された。
何かと思えば、鞄から紙と万年筆を取り出し、私の前に差し出してきた。
夜桜「また、何かありましたら、ご連絡ください!」
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作者名:松城美樹 | 作成日時:2022年5月29日 22時