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典型的なナンパである。
言い方が太宰の糞野郎よりムカついたのは、ここだけの話。
「ツレを待ってるの。早く失せてくれない…？」
正直、興味もなければ、鬱陶しいだけ。それでもめげずに話しかけてくるこの男たちにうんざりしてくる。周りを見渡すと、やはり監視カメラはある為、どうしようもない。ただ、時によってはカメラの方向が変わるみたいだった。
…うーーーーん、見てないときに気絶させちゃうか？あんまり、大事にはしたくないけど。
自問自答を繰り返していると、反応を怠ったせいか、男が右手首を掴んできた。反射的に振り払おうとすれば、痛みが全身へと走った。
A「………………ｯ、」
血管が大きく波打つのがわかる。ほんのりと痛みが増す右腕に、
頭の中で"やってしまったかもしれない"と過った。
ガーゼ＋包帯だから、少量の血では滲み出ないから大丈夫だろう。きっと、うん。
「本当は、ツレいないんじゃないの？いたとしてもさ、女を待たせている奴なんて放っておいて、
俺たちなら退屈させないしさ。な？」
「ホント、ホント」
勝手に目の前で"自分たちの行為がある意味正当な行為"とでもいうかのように、
会話を広げるのをやめてほしい。ただの迷惑以外名前のつけようがないし、お前らの
そういう行為で、世の中の女性たちが不愉快に思っているのもきっと、頭がめでたいから
知らないんだろうな。黙っててあげよう、余計に嫌われてしまえ。太宰より屑な屑共よ。
A「…いい加減、放してもらっても」
中也「おい、」
いつの間にか近くにいた中也が声を掛けてきたものの、少し様子がおかしい。なんか、
少し………
中也「俺の女になんか用か？」
怒ってる。…いや、間違いなく怒ってる。
いやね、姉さんは本当は"俺の女"ではなく"俺の姉さん"なんだけど、
そんなのはどうでもいい。本当は舞い上がりたいけれども。
A「ｯ中也、もういいから…！」
勢いよく手を振り払って、中也を連れて素早く水族館から外に出た。
黙って歩いていると、ふと中也の持ち物に疑問を持った。大きな荷物を持ってなかった中也が、
大きな荷物を背負っていることに。
A「それ、どうしたの」
中也「姉さんに贈り物。…さっき、本当は欲しかったんだろ？それくらい言えばいいのによ。
………それより、遅くなって悪かった。怪我は」
A「大丈夫、大丈夫。頑丈が取り柄よ」
中也には申し訳ないけど、なんたってお姉ちゃんだからね。
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作者名：松城美樹 | 作成日時：2022年5月29日 22時
