0*Ken Side ページ1
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「_______…!」
不意に耳を掠めた女の声とは裏腹に、
低い声が今度は耳に入ってきた
「そんなこと言わずによぉ」
自分が向かっている方向から、
徐々に大きくなる声
小さな路地
首を傾けて見てみれば、
女と男だった
だけど、見るからに女が嫌がっているのは丸わかりだった
堅「おい、嫌がってんだろ」
俺の言葉に、馬鹿みたく反論してくる男
………あー、うっせぇなぁ
堅「てめぇ、」
一瞬にして、言おうと思った言葉が消えていった
本当に一瞬、
………一瞬の事だった
目の前では男が倒れていて、
女に至っては、似つかわしくない溜息を吐いては
足を戻した
その一瞬を、俺は見逃さなかった
女が男に蹴りを入れたのだ
男は起き上がる気配はなく、
地面にぶっ倒れていた
そんな男を蹴ったにもかかわらず、
丁寧に壁へと移動させた女は俺に向かってこう云った
″これ、ナイショだよ″
困った顔をして云ったと思いきや、
すぐに真顔に戻っては、
路地から抜け行こうとする後ろ姿に向かって、
声を掛けた
堅「お前、何モンだ…!」
迷い無く綺麗に決まった蹴り
…それは、今まで見てきた中で1番綺麗だと思えた
女の答えは、人差し指を立てて口へと持っていった
″内緒″
ということだろう
そんな淡白な女を俺は忘れられないでいる_____
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作者名:松城美樹 | 作者ホームページ:https://twitter.com/matsushiro_m
作成日時:2021年7月11日 22時