鬼雨8 ページ14
「僕はAさんと、もっと近づきたいと思っています」
そういうと目尻に彼の唇が触れた。
「――安室、さん？」
びっくりして逃れようとしても、その手はぎゅうと私の頭を抑え込むように抱きしめていて身動きが取れない。
そのまま、彼の頬が私の頬に触れる。
少しでも動いたら唇が触れそうで、動揺して身動きが取れない。
万が一にもキスされたらと思うと、緊張のあまり瞳を閉じることも、できない。
筋の通った鼻梁や、まつ毛の長い瞳が至近距離で――。
あまりの綺麗さにくらくらしてしまう。
それなのに、どうして、安室さんはこんなに淋しそうな顔をしているんだろう。
私は安室さんの背中に手を回した。彼をぎゅうっと抱きしめ返す。もう片手で彼の金色の髪をそっと撫でた。
「本当は、私なんかよりずっと、安室さんの方が困っていたりします？
さっき助けてもらってすごく嬉しかったから、今度は私が力になります」
安室さんは驚いたみたいに顔を離し一瞬形の良い目を丸くして、その後ふわっと微笑んだ。天使のような甘やかな笑みはきっと、見た人すべてを虜にするに違いない。
「このままAさんと付き合えればいいのに」
それはもしかしたら、独り言が口から零れただけかもしれない。
「ごめんなさい。私今年は恋愛しないって決めたんです」
「どうしても？」
「はい、どうしても」
「僕のせい？」
「タイミングとか星回りとか、たぶんそういうのですね、きっと。安室さんのせいではありません」
「でも、あの日――」
「きっと、あの日うまくいっててもまた別の日に問題が発生したかもしれないし。それに今は――」
私を気にかけてくれる人は、安室さんだけじゃないから――
例えば、沖矢先輩と知り合う前とか。
そんなタイミングで、もう少し早く安室さんに再会していれば話は違ったのかもしれない。
どうしたって、今年は上手く回らないそういう星回りなんだと思うほかない。私は安室さんの髪の毛をくしゃっと撫でて手を離した。
この時間になったら、あれほど視界を遮っていた鬼雨はもうすっかりおさまっていたのだけれど、安室さんが「どうしても心配」と言ってくれたので、素直に家まで送ってもらうことにした。
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まつり(プロフ) - byate959さん» リクエスト、ありがとうございます。本編（沖矢さんルート）終了後、番外編で分岐点までさかのぼり、安室さんルート書ければと思っていますー！まずは本編頑張りますね。 (2022年6月15日 10時) (
レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
byate959(プロフ) - 沖矢さんルートが終わったら、どこかのタイミングで安室さんルートが読みたいです。どちらのルートもありで (2022年6月15日 9時) (レス) @page38 id: 8b6f74a7e0 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - ゆうらさん» 応援ありがとうございます！沖矢さんルートで書きますね。更新、頑張ります。 (2022年6月14日 11時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - ぽむさん» ありがとうございます！今回は沖矢さんルートで書かせていただきます！ (2022年6月14日 11時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 黒杏さん» はじめまして。気に入っていただいて本当に嬉しいです。沖矢さんルートで書きますね！ (2022年6月14日 11時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年6月8日 8時
