231グラム ページ42
零に報告したら帰るつもりだったんだけど、結局ここに出てくるだけで彼には山のような仕事が降ってくるらしい。
あまりにも忙しそうなので、諦めて先に帰ることにした。
「降谷さん、今日はありがとうございました。お先に失礼します」
聞こえてなくてもいいや――くらいの気持ちで声をかけたのに彼は一瞬で書類から顔をあげて「送ろうと思っていたんだが――」と言う。
「いいよ、まだ明るいし。忙しそうだもん」
「そうはいかない――だったらアイツを呼んで」
零はシュウのことを便利屋だと思っている節がある。
「本当に大丈夫だから。それより早く仕事を終わらせて、美味しい夕食食べさせて」
風見さん以外、誰もいないのをいいことに、私は零の耳に唇を寄せて囁いた。ついでに頬にキスをする。
風見さんはきっと私のことを「沖矢昴とも降谷零とも付き合っている」とんでもない女だと思っているだろう。まあでも、それでいい。事実、そうなんだし。
気の毒で孤独な上司をもっと気にかけてあげて欲しい。
それにしてもこの組織は本当に好きになれない。
潜入捜査中の捜査員をわざわざ事務所に呼び出し、こんなにさばききれないほどの仕事をまわすなんてどうなってるんだろう。
いっそ、あのソフトにトラップ仕掛けておけば良かったな……。次のチャンスがあるかもしれないから、今度リアムに相談してみようかな、などと考えながら公安を後にした。
そうしたらなんと、あのカラスダさんが歩いていたのだ。
これは後を付けて言ったら何かを得られるかもしれない――。
私はこっそり尾行することに決めた。
尾行と言ってもこの時間は駅に向かって歩いている人も多いので、そこに紛れれば良いだけだ。
素人にだってできるはず――。
そう思って、姿を見失わないように歩いていたら、不意にぎゅうと後ろから腕を掴まれて路地裏に連れ込まれてしまった。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時