home bitter home4 ページ26
「本当に何もなくて――」
賞味期限が切れてないペットボトルの水くらいはあるけれど、お茶やコーヒーなどの嗜好品も食べ物も何もない。
とりあえず急いで掃除機だけかけた。
「気にしないでください。
勝手に押し掛けたのは私なんですから」
「見せたかったのは、これなんだ」
私は、引き出しから引っ張ってきて銀行口座のカードを見せる。
こたつとしても使えるテーブルに置いた。
Hiromi Sukino
名前からは性別すらわからない。
「この家の名義も同じ人。漢字は――知らなかった。今日の新聞を見るまでは。
でも、昴さんは知ってたんだよね?」
今朝見せてくれたカードの一枚は「鋤野A」だったから。
「すみません――。推理小説が好きなので、ついあれこれ推理してしまうんです」
いやいやいや……。
「昴さん、その理屈だと、恋愛小説が好きな人は恋愛三昧だし、医療物の小説が好きな人は、病院通いが好きで隙あらば入院したいってことになるし、ホラー小説好きな人はお化け探しに余念がなくなるよ?」
「いえ、そうはならないと思いますけど」
面白そうにそういうと、新聞のコピーを眺める。
「鋤野裕実――この方ですね」
双子の姉にあたる人の名前だった。
「これが使えるってことは、――この人、生きてるってことだよね?」
「そうなりますね。
今、これは利用しているんですか?」
私は首を横に振る。
「怖いから、使ってないし残高も確認していない。
たぶん、通帳を向こうの人が記入したら、こっちの動きがわかっちゃうよね。
祖母が亡くなった頃に、慌ててその時に合った残高全部引き出したのが最後――」
それでも、このマンションから追い出されないということは、おそらく、通帳にはそれ以降も定期的に入金が行われているのだろう。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時