Call Spade2 ページ18
「心配しなくても、仕事を終えた後隣で寝ましたよ?」
その真偽を確かめる術が、私にはない。
「良かったら、一緒に朝食を食べて大学に行きますか?」
「いいの?」
「ええ」
ぎゅうっとしがみ続けたい私を宥め、昴さんはそっと体を離す。
「出入りできるようにあなたのカードを作りました。
お好きなほうをどうぞ」
沖矢A
――そして、もう一枚は
「もうちょっと普通の苗字にして? 田中とか佐藤とか」
昴さんはくすっと笑う。
「残念」
そして、私がそう言いだすことはお見通しだったのだろう。
佐藤A、という学生証を渡してくれた。
これは、東都大学の学生証ではなく、社会人学生として出入りできるためのカードなんだって。
「朝ごはん、食べますか?」
「その前に着替えてきていい?」
「いいですよ。クロワッサンとオムレツとコーヒー?」
「あとリンゴ!でも絶対に私が帰ってきてから剥いてね?」
「はい、かしこまりました、姫」
私が記憶をなくす前。
沖矢昴にすっかり、懐いた後――
そして、彼の「正体」を知る前の、いつも通りの生活が戻ってきたみたい。
彼が沖矢昴でいる限り、ハイネックは外せない。
――私もそれに釣り合うだけの、素敵な服を着ていたい。
私は、今日の服を選びながら、普段は深夜の公園にしか出かけなかったはずの自分のクローゼットに素敵な服がたくさんある理由を思い出す。
昴さんは家でもいつもきちんとした格好をしているから、私も釣り合いたかっただけ。
――でも、その理由なんて考えたこともなかった――
『家でも変装し続けないといけないから』
彼が正体を打ち明けたのは、せっかくそれを辞めてもらうチャンスだったのに。
私がふいにしたのだろうか――
どうしたらいいかわからなくて、ただ、胸の奥がずきんと痛んだ。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時