Backstage7 ページ7
なんとか、涙をこぼすこともなく夕食を取り終えた私はじゃんけんに勝ったので食器を洗い終えた。
じゃんけんに負けた方が先にお風呂を済ませたら合理的だよね、って話でそうなっただけなんだけど。
時間が余ったのでテレビを付けたら、ちょうど夜のニュースをやっていた。
怪盗キッドは早くも宝石をダイヤモンドを返却したという。
――早っ
あれだけの手間やコストをかけて、「ただ騒がせたいだけ」ってことはないよね。
それに、ニュースでペリドットについて触れてないのが気になる。もともと鈴木美術館はビッグジュエル以外に盗品があったことを公表していない可能性もあるし、まだ情報が錯綜しているだけなのかもしれないけれど――
考え込んでいたら、突然後ろからくしゃっと頭を撫でられた。テレビのスイッチがオフになる。
「わ……っ」
「A、テレビに夢中になりすぎ。妬かせたいのか?」
耳元でささやかれる声は、昴さんの声よりは当然ずっと低く――。
この一週間ですっかり耳になじんでいる、秀一の声で。
記憶を取り戻した私には、どちらかというと馴染みの薄い声だった。
ドキドキと心臓が高鳴る。
私は事故に遭う前日まで、私は「沖矢昴」と暮らしていた。
それまで彼に「正体」があるなんて、疑ったこともなかった。
彼の正体が赤井秀一だと知らされ、本当の姿を見て声を聴いたのは――時間にしてほんの少し。
だから、私は全然、慣れてない。
記憶が戻るまでの一週間、散々深い仲になっているのはわかっているけど、それでも――。どうしたらいいのか、よくわからない。
静かになった部屋で、自分の心臓の鼓動がやたらうるさく響くのが聞こえてきた。
128人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時