33グラム ページ38
「A、来てたのか。起こしてくれれば良かったのに」
とても寝起きとは思えない表情で、仮眠室から零が出てきた。
「シュウと喧嘩したって聞いたけど?」
「喧嘩? まさか。きちんと仕事をしてくれとお願いしただけだ」
「公安のやり方を押し付けないであげて。全然違うんだから」
「ここは日本だから……」と悪気一つない顔で零が言い出したのと、ノックと共にドアが開いたのは同時だった。
「悪い。ちょっと情報が入ったのでしばらく留守にする。
急に居なくなったらまたあれこれ言われかねないからそれだけ言いに来た」
と、シュウは部屋にも入らずそれだけいって足早に出て行くから私は慌てて後を追いかけた。
「シュウ、どうしたの? どこに行くの?」
「仕事だよ。こうみえてもFBIなんだ。大丈夫、そう大した話じゃない。今日中に片が付けばすぐに戻ってくる。明日の午後、鈴木財閥との打ち合わせはOKを貰っている。詳細は君宛にメールしているから、万が一俺が帰らなかったら一人で行ってきてくれる?」
「それはもちろん、私の仕事だからいいけど……。むしろ、そこまで話を付けてくれてありがとう。園子ちゃんさすがに迅速ね」
いい子で待っていて、すぐに帰ってくるから、とシュウが言って私の頭にキスを落とすと足早に廊下を歩いて行った。
私はひどく胸騒ぎがしたけれど――、風見さんがぎょっとした眼差しで私を見ていたのでそれどころじゃなくなった。
「あはは……。いつまで経っても外国の挨拶には慣れませんよね。距離近すぎ!
さてさて、降谷さん、あの書類で納得してもらえるといいんですけどね……」と言うほかない。
とりあえず、英語には明確な敬語という概念がなくて良かった(私は基本、FBIの人とは英語、公安の人とは日本語で会話をしている)……と思いながら、零のいる部屋へと戻る。
零はとっくに私の作った書類に目を通した後だった。
「なるほど。最低限の必要事項に抑えたわけか。
――悪くない。さすがだな、これでいこう。数か所うちの面倒な手続きにあわせて変えて欲しいところがあるから朱書きしておいた。直したらデータを僕の方に送ってくれないか。
こっちの事務の人間にあとはやらせる」
そこまで仕事モードで一気に話すと、唐突にふわりと微笑んだ。
「久しぶりに寝たらお腹が空いた。A、一緒に昼飯でもどうだ?」
ほら、急に表情を崩すから風見さんがぎょっとしてるじゃん――。
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まつり(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!前回のキッドの時とはまた違うパターンでってイメージでしょうか。承りました。 (2023年1月30日 6時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 続編おめでとうございます、!この話大好きすぎてやばいです。リクエストは、ヒロインが赤井さんと降谷さん以外の男性と親しげに話していてそれにすごーく嫉妬で狂う姿が見たいです、、! (2023年1月30日 2時) (レス) @page11 id: d7cfe12389 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 星良さん» こちらこそ、応援ありがとうございます。リクエストありがとうございますー!いいですね。私も見たい!是非書きたいと思います✨ありがとうございます。 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 続編おめでとうございます!! 今回も楽しく読ませていただいています✊ リクエストなのですが、、、蘇芳ちゃんが嫉妬?しているところがみたいです💦 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 4e794d85df (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - やっちさん» やっちさん、こちらこそ、続きまで読んでもらってありがとうございますー!引き続き、よろしくお願いします。 (2023年1月28日 20時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年1月28日 15時