敵の敵2 ページ36
ジョディの部屋はシンプルながらも生活に必要なものが揃っていた。
飲みに行くのもいいけど、最初から家でのんびりしたいよねってことで、あれこれ買ってくる。
ジョディは気が利くし親切だし話は面白いし大人だし美人だし、本当は私なんかよりずっと――。
余計なことが頭をちらつきそうで私はそこで思考を止めた。ここで、「亡くなっている人」の話をしても仕方がない。酔った勢いで人を混乱させるなんて論外だ。
そもそも、自分がややこしい人間関係を解消したいからといって、他人を巻き込むなんて非常識にもほどがある。
「今日はずっと難しい顔しているけど、大丈夫? 何かあった?」
基本、FBIではずっと英語で話しているので、ここでもジョディとは英語で話す。
「そんなに顔に出てる? なんか、会社でちょっと出世の話があって――。気が重いのよね。もちろん、話を断るってことじゃないし、今のFBIでの仕事はそのまま続けるから、何もかも変わっちゃうってわけじゃないんだけど」
良かった。気が重いことが色々あって(笑)
「まあでも、FBIはずっと日本に居るわけじゃないよね。そもそも違法捜査だし」
「それがねー、そうでもないのよ。敵の敵は味方ってヤツ。
最近、例の組織、日本での動きも目に見えるようになってきたから、近いうちに共闘体制が組めるって可能性もあるわ」ジョディが意外なことを言う。
「へぇ」
「あ、トップシークレットね。ただの私の妄想って可能性も捨てきれないわよ」と、ジョディは笑う。
「ふふ。了解」
「てっきり、シュウのことを引きずっているんだと思ってた」
それで心配してくれていたのか。それはそうだよね。
「引きずってるのはジョディも一緒でしょ? っていうか、付き合いが長い分ジョディの方が重たいと思う。
私の【赤井さん】の第一印象なんて、飲み屋でたまたま隣席になった自意識過剰で近寄りがたいイケメン、しかも観光客でしかなかったわけだし」
くすりとジョディが笑う。
「まあね、初対面でFBIのスナイパーだなんて明かせないでしょう?」
「だから、みんながすごく敬意をもって接しているのが違和感っていうか。私は結局、彼がスナイパーとして仕事をしているところも、ほぼ見てないし。銀行強盗に捕まった時は拳銃持って助けてくれたけど。
私以外の人の方がずっと、シュウのことわかってるんだろうなー……って思うことも多々あった」
過去形にするのを忘れないように、言葉を慎重に選びながら話す。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時