敵の敵1 ページ35
「A、疲れているみたいだけど大丈夫?」
ミステリートレインで色々と面倒な目にあった、次の火曜日。
FBIの事務所で仕事をしていた休憩時間、ぐったりしている私を気遣ってジョディが声をかけてくれた。
「あ、うん……。ジョディ、ごめんなさい、職場でだらけちゃって。
最近、あれこれバタバタしていて」
家でのんびりできない――というわけにもいかない。
ちなみに、マンションを借りるには若干時間がかかるのでとりあえず、最低限の荷物だけ家から持ち出して、会社近くのホテルで暮らしています。
放任主義(ってわけじゃないとは思うけど。仕事優先なのは間違いない)の零とは違って、シュウは本当に私を一人にさせてくれないし、万が一に備えて「工藤有希子」としてふるまう練習もしなきゃいけないしで――。
割と大変。
はぁ、群馬のキャンプがここまで尾を引くなんて思っても居なかった。
多分、シュウは暇なんだよね。
そろそろFBIの人に生きていることを明かせばいいと思うよ、全く。
「全然。休憩時間くらい思いっきり羽根伸ばして。
そういえば、今夜空いてない? うちに遊びにきてって話、してたでしょ?」ジョディは優しい。
「あ!うん、いいの?今夜。
すごく行きたい!」
ジョディからの誘いであれば、きっとシュウだってダメとは言わないはず。
なので私は、「今夜ジョディに家に泊まって? って誘われたから泊まっていいよね? だって、断るのも不自然でしょう? 明日はそこから直接職場に行く」と、シュウにあてて、メールを打ってみる。
「君がそうしたいというなら別に構わんが、これで事件にでも巻き込まれたらより一層束縛したくなるかもな」なんて、わざわざ電話をかけてきて怖いこと言うのやめて欲しい。
あと、私のこと束縛しているって自覚があったんだ――。
無自覚だと思っていたので、驚いた。わざとか!
「いくらなんでも大丈夫よ。ジョディだよ?」
「ああ、確かに。ついこの間、銀行強盗にあって、その後は米花百貨店で爆弾騒ぎに巻き込まれた程度だな」
――嫌なことばっかり思い出させるのやめて。
「今夜は出かけないから平気。万が一、何かあったらすぐに連絡する。助けに来てくれるよね?」
「秘密主義の君にしては珍しく、殊勝な心掛けだ。わかった、楽しんでおいで」
私なんかよりずっと、シュウの方が秘密主義だと思うけど。
せっかくOKをもらったのに、面倒なことになっても困るので、その想いは口にはしなかった。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時