ミステリートレイン11 ページ18
「いや、それなら君も乗っていることにした方がいい。降りる時に絶対に姿が見える。嘘をつくメリットなんてないだろう」もはや、口調を沖矢昴に戻すことは諦めたらしい。
「そう? 知らないと思うけど、実は蘭ちゃん意外と私のファンだからどこに居るの?って会いに来るかもよ?――それとも、マスミに直接聞いてみようか。今何してる? って」
「いや……その聞き方で部屋の場所まで聞き出すのは不自然だ」――言われてみれば、確かに。
「もしかしたら
「シャロンって――?」突然新しい人が出てきて私は戸惑う。
「ごめん、Aちゃん、話すと長いから割愛させて。とりあえず、今はシャロンはベルモットという認識でいいわ。でね、シャロンと私、同じ師匠に倣ったの。変装の仕方を。今思えば師匠の声って赤井さんの声に似てたかも」と、笑って見せた。
「あの、シャロン・ヴィンヤードがわざわざ俺に、ねぇ……」沖矢さんはつまらなそうに肩をすくめた。
「え、あの有名なハリウッド女優の?」
まさか、シャロンがあのシャロン・ヴィンヤードを指すとは。恐れ入る。
いや、待って。シャロン・ヴィンヤードって去年亡くなったよね? しばらくワイドショーがシャロンの訃報でもちきりだったじゃん。
「ああ悪い。君を混乱させるつもりはなかった。かの女優とは同姓同名の別人の話だと思ってくれて構わんよ」と取ってつけたように沖矢さんが言うけど、本当かしら。
そもそも、同じ人が複数の名前と別の顔を持ちすぎなので、理解が追い付かない。
こうなってくると、シュウも組織に居たときに実はコードネームがあってとか、実は名前も変えていて……とか言い出しそうな気がしてくるから怖い。
あれ? じゃあ実は降谷零も、ずっと前から組織潜入のために安室透って名前を使っていたってことなのかな。私が知らなかっただけで。
いっそ、どんな姿になっても私を見かけるたびに変わることなく、声音すら素に戻して「おねーさん❤」と無邪気に話しかけては口説こうとする怪盗キッドが一番マトモにみえるほどだ。
なるほど、探偵と名乗れるくらい優秀な人だけがこの世界で話についていけるのか――と納得しそうになった。
私には無理――。っていうか、そもそも私、どうしてここに居るんだっけ?
「ところで、私は何をしたらいいんですか?」有希子さんに問う。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時