敵の敵5 ページ39
「ちょ……っ。なんで二人仲良くなってるの？」
意味が分からない。
「おや。仲の良い人の耳を引っ張るような趣味はありませんが」
沖矢さんは、むっとしているキッド(近江谷君)の傍でにこやかに微笑んでいる。
明らかに周りの視線を浴びているので私は足を進めた。
沖矢さんは、自分の車にエスコートしてくれる。
――これもさあ、どうしてこんな派手で特徴的な赤い車にするんだか。
いや、お似合いですよ？
お似合いですけど――。偽装死の意味、わかってます？
「だって、昴さんに近づけばおねーさんに近づけるでしょう？」
と、近江谷君に変装したキッド君はにっこり笑うけど、どう考えてもそれは絶対に、無理。
「昨日、近江谷君と話をしたのは事実ですよ。
ジムの会員になって彼に近づくのは簡単でした。
その前後に、偶然、彼(キッド)にも遭遇してね。
私に対して何か言いたそうだったので、その後で話をした――というわけです」
流れるような言葉が、嘘か本当か私にはわからない。
でも、キッドが完璧に近江谷君を演じているところを見ると、それなりに接触したってことだよね。
「なんで？」
「もちろん、あなたの情報を探るためですよ」
「ちょ……、私は別に――過去を探るために――」
ジョディの家に泊まったわけではない――といいたかったけど、それじゃキッド君に赤井秀一のことがバレないとも限らないし。
話がしづらいことこの上ない。
「でも、大変ですよね、赤井さん。あんな組織から身を隠すためにわざわざ偽装死しているなんて」
と、後ろの席でさらりとキッド君が言い出すから、むせるところだった。
「はぁ？」
「協力してもらうためには致し方ないじゃないですか。
背に腹は代えられぬってやつですよ
――それに、彼はもう重大な秘密を知ってしまっている」
それって、哀ちゃんのこと、だよね？
もしくは、キッド君が哀ちゃんとして語った一連の話かもしれない。
「そんなの、たまたまあの列車に乗っていたから、コナン君に巻き込まれただけじゃん！」
「いやぁ、まあそれはそうなんだけどさ
もしかして、探しているものが同じって可能性が出てきたんで。
オレにとってもメリットのない話じゃねーんだ、これが」
いや、待って。近江谷君の姿でキッドの口調で喋るのやめて。脳がバグる。
「やっぱりおねーさんはオレの女神だ」
なんて言って、気軽に後ろから私の頭を撫でるのやめて―。ねえ、本っ当に殺されるよ？
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年11月25日 12時
