見えない事実2 ページ27
いつものようにポアロの営業が終わって片づけを手伝って帰る。
何か飲む? っていうから、バーボンを飲む零の隣で、ビールを開けた。
「昨日は楽しかった?」
「うん。蘭ちゃんの楽しそうな話が聞けたよ。……そういえば、コナン君から【黒づくめの組織】って知っている?って改めて聞かれたのはびっくりしたけど――もちろん、知らないって答えたけど、なんで急にそんなこと聞いてきたのかなって」
「ふぅん。もしかしたら、何か情報を得たのかも」
零は形の良い青い瞳を眇めてそう言う。
「コナン君が?」
小学生が――いや、高校生だけど――得られる特別な情報って何? どんなルート持ってるの?
あれ? そういえば零は知らないんだよね。
江戸川コナンの正体――。
だって、哀ちゃんのことも存在自体知らないくらいだし。
うーん……。本当にややこしい。
「あの子はほら、切れるから。
僕も頼りにしてるし」
「そうなんだ? 零がコナン君のことを頼りにしているなんて知らなかった」
公安警察に頼りにされるなんて、どんな小学生。
「何かきっかけになる話でもあった?」
「それがよくわかんないんだよね。いつものように食事を食べて飲んでいただけだし」
「お酒?何を飲んでたの?」まさかそこを掘り下げるとは。
「毛利探偵に付き合って、ビール。
これとは銘柄は違うんだけど」
「ビールだけ?」
「うん。その後、蘭ちゃんがウイスキー出そうとしたけど私飲めないから止めたくらいかな」
「へぇ、ウイスキー、ねぇ?」
「うん。ほら、私ビールだと全然顔色変わらないじゃない? 毛利探偵は結構酔った感じになるんだけど、それでもお酒には強いから。
蘭ちゃんが、頂き物のバーボンがあるから出そうか?――って。ほら、私ウイスキーだけは全然だめだから止めたって話。でも、その話はコナン君には全然関係ないと思うけど?」
未成年にウイスキーの話が響くとは思えない。
カラン、と、零が氷の音を鳴らしてグラスを揺らす。
「零?」
彼はひどく、興味深げな眼差しを自分のグラスに注いでいた。
「バーボン、ねぇ。
なんでもない。そうだな、全然関係ない――なんとなく聞いてみたかっただけじゃない? 子供だし」
不意に零がその話を打ち切ってしまって私は目を丸くする。
だって、ついさっき「頼りになる子供」って自分で高評価していたくせに。
でも、零はその後自然と話題を変えてしまったので、その話はそれで終わりになった。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月8日 10時