バーベキュー6 ページ4
哀ちゃんの驚いた顔に、食事に夢中だった子供たちが次々と顔を上げる。
「ちょっと、元太君がお肉ばっかり食べているからAさん食べられなくて泣いてるんじゃないですか?」
元太君にクレームを入れる光彦君。
「そんなことねーよ、な?」
と言いながら、お肉が大量に乗った皿を私に差し出そうか迷っている元太君。
「Aおねーさん、もしかして頭痛くなった?」
歩美ちゃんは自分のお皿をテーブルにおいてわざわざ私のところに駆け寄ってきてくれた。
小さな手でハンカチが差し出されて初めて、私は自分の頬が濡れていることに気づく。
――どうしてこのタイミングで、封印されていたはずの記憶が零れ落ちるんだろう。
「あ、あれ――?
どうしたんだろう。ごめんね、せっかく楽しく食べてたのに。
私、たぶん初めてで。
こうやって誰かと食事をとるのが。
嬉しくて泣けてきちゃっただけなんだ。ごめん、気にしないで。大丈夫だから」
昴さんと出会う前まで、私はいつだって、独りぼっちだった。
それを淋しく感じたことがなかったのは、それ以外の状況の存在をただの1つも知らなかったからだ。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月19日 15時