ヘッドハンティング20 ページ48
「赤井さんはどうするの？」いい加減窮屈になったのか、スーツの上を脱いでネクタイを緩め始めた赤井さんにそう言うと、彼は再び手を出した。
っていうか、ここで上着を脱ぐのはやめて？ 受付の田中さんの熱視線、感じない？ いっそうのこと、感じてあげて？
「――まあ、まだギリギリ、ここならいいけど。本当は禁煙エリアなんだからね？」
私は彼に煙草を返す。赤井さんは不思議そうに首をかしげると「煙草はまだ君が持っていていい」と言う。
「じゃあ、何？」何のためにさっきから手を伸ばしているのかわからない。
首をかしげる私を見下ろす赤井さんの瞳はいたずらを思いついた子供のようだった。
「手を伸ばしたらそれは、君と手をつなぎたいという合図に決まっている」
「そんな決まりはありません」
時折思い出したように距離感バグるのはどういう趣旨なのか。
私は手を伸ばさずに問う。
「私、この後ブラック氏と打ち合わせのために事務所に行くんだけど、赤井さんも一緒？」
「ああ、俺も同行する。いい加減着替えたい」
「赤井さん、ごめんね、帰ってくれて本当に良かったのに」
そこはやっぱり申し訳なく思う。
「なぜ？」と、赤井さんはひどく色気のある顔で微笑んだ。そうして、私の耳元に唇を寄せ「君はこっちの姿の方が好きだと思っていたんだが、違うのか？」と余計なことを言うから耳が赤くなる。
ずるい。でも、これで赤井さんのペースにのせられて、万が一、心を許そうとしたら、きっと安室さんと同じようにどこかで拒絶されるに違いない……とも思う。
だって、エレベータの中の様子を見る限り、2人は何か「同じ理由」で私に目をかけてくれているんだと思うから。それが何だかさっぱりわからないけれど。
受付の田中さんが言うみたいに本当に「イケメン独り占め罪」があるというのなら、その気もない女性に対する「溺愛禁止令」も発令して欲しいところだ。
でもそんなことも言ったところで赤井さんが耳を傾けてくれるとも思えない。仕方がないので私は「違いますよ」と言うのが精一杯だった。
私がFBIが秘密裏に作った事務所に行き、赤井さんに煙草を返す姿を見たFBIの人たちが「あのシュウから煙草を取り上げることができる人がいるなんて……ただものじゃない……」とざわめくのは、ほんの数十分後のこととなる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 758人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「名探偵コナン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつり(プロフ) - タタリさん» タタリさん、ありがとうございます。 (1月26日 8時) (
レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
タタリ(プロフ) - 面白いです！赤井さん降谷さんコンビ最高！ (1月25日 23時) (レス) @page22 id: 3b67077e0b (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - ハロさん» ご指摘ありがとうございます。ここでは代理できており、時間がないため説明の手間を省こうと偽っている設定です。本編に説明文を加えておきますね。 (5月18日 17時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
ハロ - 風見は警察庁では無く警視庁ですよ (5月18日 16時) (レス) id: 39e5bd607a (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - ゆーちゃんさん» 嬉しいです。ありがとうございます！ (2023年3月2日 16時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まつり
| 作成日時：2022年9月1日 8時
