information14―沖矢side― ページ44
「しかし、この動画を見て彼女を狙ったところで何の意味もないだろう。逆恨みにしても筋違い甚だしい」
「――そういうもんだろう。だいたい、冷静沈着な殺人者なんてそう大勢いるもんじゃない。多くの場合頭に血が上ってその場の勢いで見当違いのことをしでかすものだ。あの動画に映っていて顔が判別できる人物は彼女しかいない」
「裏切り者が誰かってこともわかったのか？」
「その連絡は来ていないが、※※国の言葉が理解できて、おおよそあの位置から動画撮影できて、それなりの方法で動画を送信できる人物――となれば、絞り込むのは容易いだろうよ。俺なら、東都大に出入りしていた人物を中心に洗い出す。あるいは、どこかにアキレス腱があって、脅されている人物かもしれんがな」
どんな理由があれ、市民を守るべき立場の公僕が一般人を危険にさらすなど言語道断。
俺が先に犯人を見つけてうっかり処分してしまう前に、公安で保護して欲しいところだ。
「そういう顔。それが本当のお前だと思うんだけど、姫はそんな顔のお前は知らないって言ってて可笑しかった」
不意にJがこちらに視線を投げてそんなことを言ってひそやかに笑う。
「――放っとけ」
Aの前でことさら不機嫌になる理由がない。俺が不安を覚える時ですら、彼女にはその様子を悟られたくないのだから、こんな表情を見せるタイミングなどあるはずもない。
「珍しいな。お前が他人にそんなに肩入れするなんて。家族以外の、世界中の人間が滅んでも気にしないような奴だと思ってたが」
「なんだよ、それ」
そんなわけないだろう、いくらなんでも。
「I'm glad you seem happy.(お前が幸せそうで何よりだ)」Jはぼそりとそう言うと「後は自室で調べる。他に何かやっておいて欲しいことがあったら言ってくれ」と、煙草を咥えたままPCを手に立ち上がった。
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年8月1日 15時
