bomb12—安室side― ページ2
僕は風見との通信を切り、現場へと駆けあがった。
やはり、死亡した「人」の姿は見当たらない。
この時間はたまたま、この教室は使われていなかったという。
――米花駅では人が爆弾を巻いたまま爆破した。
しかし、ここでは爆弾しか爆発していない。「人」の四肢が散乱しているとか、独特の死臭が漂っているなどという事態は起こっていなかった。
むろん、この爆破の中被害者がいないのはいいことだが、――では、加害者――テロの犯人はどこへ行った。
ここは4階。飛び降りて無事に済むだろうか。
「立ち入り禁止です!」という声を振り切って窓際――もはや、爆破して窓とは呼べないが――まで行く。
いくつか足場として利用できるものが散見した。2階まで降りられればそこの大木に飛び移ることも不可能ではないだろう。
「学生の避難は全員終わったのか?」
苛立った口調で現場に問う。
「そもそも全体の人数が把握できないのでカウントしようがありません」
なんとも、情けない返事だ。
雨はさっきよりずっとましになっている。
僕は校内を見下ろした。
ふと、眼下に見慣れぬ白い民族衣装――。
それは真っ直ぐにA棟へと向かって走っていく。
僕は拳銃を抜き、その白い影に向かって引き金を引いたが致命傷を与えるには至らなかった。
ふと、ぞわりとした嫌な予感が背中を這い上がった。
あの大きな爆発音がしたとき、Aさんはまるで何もなかったかのように可憐な笑みを浮かべていた。
PTSDが治ったわけでもないのに、身をかばうように右腕も抱きしめることも、不安な表情を見せることもなかった。
――あの時、僕を気遣って精一杯の嘘をついていたのだとしたら?
僕と別れた後、とても正気ではいられなかっただろう。
あの人のことだ。きっと、『誰にも見つからないところ』に身を潜めて耐えたに違いない。
そんな彼女を果たして、この期に及んで「全体の人数が把握できない」とか間抜けなことを口にする奴らが見つけることなんてできるのか――?
――嫌な予感がする。
とても階段を駆け下りる暇などない。
僕は助走をつけると爆破前までは窓があったであろう場所を飛び出し、少し離れたところにある大木に乗り移り、それを伝って下まで降りた。
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まつり(プロフ) - かるぴんさん» かるぴんさん、はじめまして。長々と続いていてすみません。はい、続きも書きますねー。まだ、いつ終わるかもわかりませんが引き続きお付き合いいただければ嬉しいです。 (2022年7月8日 20時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 引き込まれる文章であっという間にここまで読みました!とても面白いです!大変だとは思いますが、続きを心待ちにしています!お体に気をつけてください! (2022年7月8日 19時) (レス) @page16 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2022年7月7日 9時