Columbine. (ページ12)

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「ほな、1ヶ月向こうが実家帰んの？」
「うん。ゆっくりお互い考えようってなった。」

あの日から数日。景瑚は実家に戻り、私はあの家でひとり。考えたところで私の考えはもう変わらないけど、景瑚は分からない。だから、時間は必要だと思う。

正直、それよりもっと、気になること。

"俺の方がええやん。"

あの言葉の意味を、未だ確かめられていない。こんな時に何を考えているんだと自分が情けないけど、あの時の彼の顔、声、全てが頭から離れない。

私のために、嘘をついてくれただけ。
優しい碧海が気を利かせて言っただけ。

そう言い聞かせては居ても、心のどこかで、何かを求めている自分が居て胸がチクンと痛んだ。

「タイムリーな雑誌やな、これ。」

休憩中、純喜が渡してくれた雑誌。そこには、玉の輿が云々、お金か愛か云々、そんな事が書かれている週刊誌。それを手に取って、サンドイッチを咥えながらその一文を読んだ。

「"お金が大切だけど結局愛がないと無理"…ねえ。」
「Aは、ほんまに彼氏のお金は興味ないもんな。」
「まぁね。…いや、お金もあったらあった方がいいよ。」

ただ、社長の息子じゃなくても、当時の私は彼を選んだと思う。こんな結果になってしまったから"愛"を選びたいだけで、このまま順調にいっていたら所謂玉の輿だった訳だから、それなりにお金も求めてしまっていたかもしれない。

「Aが"お金ある人が好きぃ〜"とか言ってたら嫌やわ。」
「"お金大好き〜""お金がない人なんて無理〜"」
「やめろ、バイトの俺にグサグサ刺さるから辞めてくれ。」
「言って欲しかったんでしょ？フリでしょ、今のは。」

笑いながら喋っていたら休憩が終わる時間で、私は「お先」と声をかけて店内へ出た。

「Aちゃん！」

すぐに目に入ったのは、私を見つけて手を振る碧海。その姿は数日前と何の変わりもなくて、私は手を振り返して近付いた。

「…終わったら、時間ある？」
「うん。大丈夫だよ。」
「ほな、ちょっとだけ話したい。」
「分かった。終わったら、連絡するね。」

碧海は、何も買わず、約束をしたらすぐに店を出て行った。
自分の置かれた環境を考えれば、2人きりで会うべきじゃない。そう思うのに、やっぱり、あの言葉の意味を確かめずには居られない。

何かを求めている自分。
その何かがもし与えられてしまったら。そう思うと、痛んだはずの胸がなぜかじんわりと熱くなった。

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